「俺は守りたいんだ、仲間を!」 不思議な能力を持った子供たちが送るアクション活劇、ここに開幕! わるいおとなにいたずらしてやるっ!
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Episode3 君は必ず……俺が守る!(3)

「?」
 タチバナ家からレス・レス・ハウスに戻る途中、バーニィは違和感に気づいて立ちどまった。それからごそごそとポケットの中をまさぐる。
 違和感の正体は携帯電話だった。バイブレーションでぶるぶると震えている。どうせまたわけのわからない迷惑メールだと思ってカバーを開き、画面を見る。
 メールは、ナターリヤが設置した特別サーバからの管理者権限のメールだった。有事の際にも連絡が取れるよう、ナターリヤの開発したシステムで様々なやりとりができるようになっている。
『ウララ ‐ 携帯電話破損』
 その無機質なテキストが意味することを、バーニィは一瞬理解できなかった。サーバにアクセスして、ウララの携帯のGPS情報と、ウララ自身に着けた発信機――もちろん、本人の合意の元に、髪飾りに組み込んである――のGPS情報を取得する。
 携帯電話は一ヶ所から動かない。だが、ウララ本人は凄いスピードで南下している。
「――!」
 その向かっている方向に、は不吉な建物があることをバーニィは知っている。
「アダムか……!」
 バーニィは怒りのこもった視線で眼前を睨みつけると、地面を蹴って大きく飛んだ。
「"疾風のごとく……burning power"!」
 その姿が屋根の上に現れたと思うと、あっという間に南へと消えた。

「おや?」
 下校途中、ナターリヤは不意に呟いて立ち止まった。
「? どうしたんだ?」
 まるでアッシュが声が聞こえないかのように、ナターリヤは携帯電話を取り出して、その画面をタッチペンで叩く。
「システムからの自動送信メールだヨ。……ウララの携帯電話が壊れたみたいネ。……うん、ウララが高速で南下してて、それを追いかけるようにバーニィも南下してる」
「……何かあった……と考えるべきやな」
 QJに声に深刻な顔で二人は頷いた。
「とりあえず、私はレス・レスに電話して来てもらうから。アッシュはバーニィに電話して状況を聞いて!」
「OK!」

「バーニィ……?」
 裏庭に隠れていたバーニィは、不意にかけられた声に驚いて、振り返った。
「!」
 その顔にウララは驚いて、思わず口を覆う。

 バーニィは、泣いていた。

 ウララとバーニィが出会って、すでに四年ほどが経っていたが、バーニィのそんな顔を見たのは初めてだった。
「……親父が死んで、俺はこれからどうしたらいいのか分からない」
 バーニィは慌てて涙を拭ってから背中を向け、呟くように言った。
 今、バーニィは黒い礼服、ウララは黒いタートルネックに黒のスカート。大部屋から聞こえる読経の声。祭壇に置かれた棺の上に掲げられた白黒写真には、バーニィによく似た大人の男性が映っていた。
「……」
 ウララは、そんなバーニィになんと声をかければよいか、分からなかった。中途半端な言葉は、今のバーニィにはきっと届かない。財力にものを言わせて彼を救済しても、きっと解決できない。
「……お父様、立派だったらしいわ。本社ビルに侵入してきた強盗を倒してくれたおかげで、会社は何も失わずに済んだの……」
「……」
 ウララの声に、バーニィは何も答えない。ウララ自身もこれ以上、なんと声をかければ良いか分からず、ただ静かにうつむいてしまった。

 どうすれば、バーニィを救うことができるのか。
 どうすれば、バーニィを助けることができるのか。
 ウララには分からなかった。

 だが、こんな状態のバーニィを見ているのも、同じぐらい嫌だった。
「……バーニィ!」
 ウララが大きな声をあげたと思うと、どん、とバーニィの体が衝撃に揺れた。
 そう、その背中に、ウララが抱きついていたのだ。
「ウララ……?」
「バーニィ、明日から私の家に住んで! そして、私が学校に行く時の送り迎えをして。変な人が来ても、あなたのカラテで追い払って欲しいの」
 バーニィの肩を掴むウララの両手は小刻みに揺れ、その声も震えている。
 そう、ウララも泣いていた。うつむいたままで、こらえようとしても涙は止まらない。
「だから、私と一緒に来て、バーニィ。分かった?」
「……ありがとう、ウララ。俺は必ず君を守る。絶対に――」

「てめえ、俺が追いかけてるのに気づいてやがったな?」
 夜の公園に、バーニィの声が響く。ブランコを漕ぐオデットを見上げて、言った。
「ウン。ほんとは早くアダムたんにあれを渡さないといけないんだけどね」
 言ってオデットは、後ろにある竜巻を促す。その中には意識を失ったウララが浮いていた。
「なんか、最近つまんないから♪ オデットと遊んで♪」
「ふざけるな、ウララを守るのが俺の使命だ。……あと、パンツ丸見えだ、早くしまえ」
「出血大サービス中なの♪ ……よいしょっと!」
 ブランコをぐんと漕いだと思うと、オデットが飛んだ。華麗に宙を舞い、空中でくるくると回転する。それからサーカスの軽業のフィニッシュのように両手を広げて足を揃え、すたんと地面に着地した。
(……!?)
 バーニィはそれを見て、思わず目を見張る。
(……今、着地するまでに何回転した?)
 ブランコで一番高いところから飛んだところで、地表からたかだか二メートルぐらいだ。それで目で追えないほどの回転をするなど、人間技ではない。
(竜巻といい、あの身のこなしといい、アッシュの言う通り何か能力を持ってやがる……!)
 バーニィはなんとなく感じる嫌な空気に、無意識に唇をきゅっと噛んでいた。
「……貴様、ウララをさらってどうする気だ」
「えっとね、ウッドシティをせーふくしてカワイクするには、偉い人が邪魔なんだ。だから、ウララを人質にして、タチバナ財閥を乗っ取っちゃおうってこと」
「ふざけるな!」
 バーニィが飛び出す。目にも止まらないそのスピードを乗せて、握って拳を突き出した。
「カラテパンチ!」
「きゃあ♪ おやめになってぇ♪」
 オデットは、おどけながらバックステップで素早く飛び退く。空を切ったバーニィの拳が、ごうと唸った。
(! かわされた……!?)
「"パーティが始まるよ……妖精の舞踏会"♪」
 オデットは右手を引いたかと思うと、指を開いてばっと突き出す。突き出された手から、湯気か煙のようなものが、わずかに見える。オーラだろうか、彼女の体をまとうように発生している。
 次の瞬間、黄色い光輪が生まれたかと思うと、オデットを中心にどんと広がっていった。
 それが消えると、オデットを中心に、ごうと風が凪ぐ。
「!?」
 バーニィは咄嗟に、両手を交差させて顔面を覆う。風が、通り抜けざまに体を切り裂いてゆく。皮膚がちりちりと痛み、服が避けてゆく。
 風が通り過ぎると、バーニィは全身傷だらけだった。傷はそれほど深くないとはいえ、数が多すぎる。
「ぐ……風を自由に操る力か……!」
「アダムたんの邪魔をする奴は、アダムたんに代わってお仕置きよっ!」
「また懐かしいネタを……! このっ!」
 バーニィが再度飛びかかる。正拳を右、左と交互に二発。だがオデットは、それを軽くかわしてみせる。
「えへへ、鬼さんこーちらっ♪」
 オデットがおどけて言うのに、バーニィはますます頭に血が登る。
 右足を踏ん張って、下駄の先を地面に突き刺した。それから土を指で掴むと、足を振り上げてオデットに浴びせる。
「ちょ!? 服が汚れる! っていうか目に入ったー!」
「カラテパンチ!」
 土で目が見えなくなったオデットに、バーニィは殴りかかる。オデットの体に拳が叩きこまれたと思った瞬間――バーニィはその手を止めざるを得なかった。
「……卑怯な」
「それはお互い様♪」
 オデットの目の前には、竜巻に包まれたウララがいたからだ。
 それからオデットは右手を下から上へと振り上げる。バーニィの足元からごうと風がおこったと思うと、バーニィの体はやすやすと巻き上げられていた。
「!」
「ねえ、もっと遊ぼうよ♪」
 バーニィはくるくると宙を舞ってから、少し離れた距離に着地する。
「てめえと遊んでる暇なんてねぇんだ。だから早く、ウララを返せ」
「やだよー。そしたらオデットがアダムたんに怒られるじゃん」
「……分かった。それなら実力で取り返させてもらおう」
 バーニィは、履いていた下駄を適当に脱ぎ捨てた。からからん、と軽快な音が響く。
「……"疾風のごとく……burning power"!」
 バーニィの体が消えた。誇張ではなく、オデットの目にはまさしくそう見えたのだった。

「ええっ!?」
「……ったく、手間かけさせやがって」
 バーニィの声が、予想外の場所から聞こえてきた。オデットのずっと後ろにある、滑り台から聞こえてきたのだ。
 そう、そこにバーニィはいた。滑り台の一番上で、ウララを両手で抱きかかえて。
「え? あれ? えええっ!?」
 目の前の竜巻と滑り台を交互に見て、オデットは慌てふためく。
「本気出せばそんなもん、なんとでもねぇんだよ」
「う……ん……バーニィ?」
 ウララが声を漏らしながら、ゆっくりと瞼を開き始める。バーニィはそれを一瞬だけ見下ろしてから、「しっかり捕まっていろ」とだけ言った。
「うん、ありがとう、バーニィ……!」
「このー! もー怒ったぞー!」
 言ってオデットが手を振りかざす。滑り台を巻き込んで竜巻が起こるが、バーニィの姿はそこにはもうない。今度は鉄棒の上に立っていた。
「このお、オデットだって本気出しちゃうんだから!」
 握り拳の両手を振り上げて、それからぶんと振り下す。空気の流れがぐんと変わったかと思うと、バーニィを囲むように四つの竜巻が起こった。それは一瞬にしてより大きいものとなり、四つは融合しながらバーニィへと向かってくる。
(……まずいな、ウララを抱きかかえたままじゃ、フルスピードが出せねぇ……!)
「そこまでヨ!」
 不意に声が場に響く。ナターリヤの声が、空から聞こえてきた。
 ばっ、と空気を切り裂く音が響いた瞬間、竜巻が中心から割れた。
「バーニィ! ウララ! 大丈夫か!?」
 アッシュの声がそれに続く。炎に包まれた十手を構えており、それで竜巻を切り裂いたのだった。
 レス・レスの体に捕まって、アッシュとナターリヤ、それにマイケルが飛んできている。QJもどこからともなく跳んできて降り立った。
「……ったく、遅せぇよ」
「だったら最初から携帯出ろよ!」
「悪ぃ悪ぃ、忙しくてな」
 バーニィがにやけて返すと、アッシュも笑って返す。
「アダムたんの言う通り、嗅ぎつけてきたね、Childlike wonder……!」
「オデット……お前、アダムの手下だったのか!」
 アッシュが詰めよって言葉を浴びせた。そう、アッシュには見覚えがある。アダム・コーポレーションのビルの前で見た、rue-rue girls!のメンバーの仮面を着けた一人だ。
「そーよ。だって、力をくれたし、街をもっとカワイくしてくれるっていうんだもん♪」
「ばか! そんないい話があるはずないだろ!」
「いいの、もういいんだよ!」
 オデットは視線を落として、呟くように続ける。
「オデットはこんなにカワイイのに、みんなオデットをいじめる。だから、今度はオデットがみんなをいじめるのっ!」
「!」
 ぐんと突き出されたオデットの右腕から、風の刃が飛び出す。アッシュはとっさに十手を構えると、刃は表面で弾けて消えた。
「アッシュ、ウララを頼む」
 ぽん、と肩を叩かれてアッシュが振り向く。そこにはバーニィが立っていた。
「……OK、あとはまかせたぜ」
「ああ。察してくれて、ありがとな」
 バーニィが地面にウララを下ろして、不敵に微笑む。
「さて、いっちょ揉んでやるか」
「何を揉む気なのヨ……さ、ウララ、こっちに」
 ナターリヤがツッコミをいれつつウララに肩を貸し、レス・レスの方へと連れてゆく。
「バーニィ! ごめんね、私……」
「気にするな」
 ウララの声に微笑んでみせると、バーニィの体が跳んだ。一直線にオデットめがけて拳を突き出し、まるで弾丸のように。
「!」
 慌ててオデットは風の壁を作る。バーニィの拳がぐっと食い込んだと思うと、その勢いが徐々に殺されてゆく。そしてそのまま完全に止まったと思った瞬間。

 その姿が消えた。

「!?」
 オデットが慌てて辺りを見回す。
 背後に見えるのは、バーニィの姿。
 それも一人ではない。
 四人のバーニィが、オデットを取り囲んでいた。
「ふぅ、これでやっと本気でやれるぜ」
「この……っ、まだ本気出してなかったのぉ!?」
「その通り。……カラテ奥義其の壱、"ミダレザクラ"」
 四人のバーニィが、一気に殴りかかる。オデットの体に拳がめりこんだと思うと、その小さな体はやすやすと宙を舞った。
「ああ……っ! こんな痛いのはいやぁっ!」
「……ウララに手を出す奴は絶対に許さない。必ず俺がおしおきしてやる」
 オデットの体が、地面に激しく叩きつけられる。悔しそうにぐっと砂を掴んで、悔しそうな顔で歯をくいしばった。
「オデットは……カワイイんだもん。負けるはずなんて……」
「もういいぞオデット、お前の負けだ」
 場に野太い声が響いて、空気が一瞬にして流れを止めた。
「……あっ、アダムたん……!」
 そう、そこに立っていたのは、アダム。アダム・マクレーン本人だった。葉巻をくわえながら、雄々しく、威圧感を醸し出しながら、その存在感を充分にアピールしている。
「まったく、どこで寄り道しているかと思えば、余計な事をしやがって」
「だってぇ……一人でも倒しておけば、アダムたんが楽になるんでしょ♪」
 オデットの言葉にアダムは困ったように舌打ちしてから、レス・レスたちに向き直った。
「まあいい。……さて、こんばんは、Childlike wonderの諸君」
「アダム……ッ!」
「元気そうじゃないか、レス・レス。着実に仲間を増やしているようだな。喜ばしい事だ」
 場にしんと凍るような沈黙が訪れた。
「まあ、今回は俺の負けでいい。その代わり、うちのお嬢さんを連れて帰りたいんだが、構わんだろ?」
「ふざけるなッ!」
 アッシュが反射的に叫んで、飛びかかる。迷わず頭部めがけて十手を振り下ろした。
 だが、がきぃんと金属音が響いたかと思うと、アッシュの剣はあっさり受け止められていた。
「ふむ、それなりには成長しているようだな」
 ヴィクトワールだった。愛用のショートソードで、十手を受け止めている。
「……!」
「もう、あれだけアダム様に逆らったらお仕置きだって言ってるのに。分からない子ねぇ」
 その後ろに立っているのは、マリレーヌ。艶っぽい微笑みを浮かべながら腕を組んで、アッシュを見つめていた。
 その横で、仮面をつけたもう一人が、様子を見ている。オデットほどではないが小柄な少女で、黒髪をショートカットにしている。正面にスリットの入ったチャイナドレスの下にホットパンツを履き、靴はスニーカーに近いラフなものだった。
「ま、そんなわけで、忙しいからもう帰りたいんだが。構わんだろ?」
「ウララを誘拐し、傷つけた! それを見逃せるわけないだろ!」
 アダムがいつも通り高圧的に話すのに、アッシュは苛立つ。思わず声を荒げて叫んでいた。
「少年、見苦しいぞ」
 ヴィクトワールが一歩進み出て、続けた。
「無意味に狙われたわけではないだろう。社気的立場や地位を持っている者は妬まれ、狙われる。ただそれだけの事だ」
「……」
 アッシュは返す言葉が見つからず、唇を噛む。
 ヴィクトワールの言っている事は、確かに間違いではないのかもしれない。社会の流れとしてはそれでいいのかもしれない。
 だが、アッシュにとってそれは、到底納得のいく話ではなかった。
「……アッシュ、もういいよ」
 レス・レスは絞り出すように言って、後ろからアッシュの肩に手を乗せる。
「今の僕たちでは、アダムを倒す事はできない。オデットを返せば引いてくれるというのであれば、従おう」
「! レス・レスっ!」
「懸命な判断だ、レス・レス。お前の"聖なる導き"は、俺の"山羊の左手"には勝てん。貴様んとこのガキたちでは、うちのrue-rue girls!には勝てん。ただそれだけだろう?」
 そこでアダムが割り込んでくる。その言葉にレス・レスは、自分の右手に視線を落として、ゆっくりと息を吐いた。
「所詮分家のお前にゃ、ガキにしか力を発揮できん。だが、俺は少なくともXX染色体の持ち主――つまり、すべての女にこの能力を行使する事ができる」
「分家は貴様の方だろう。全てを奪って本家を名乗るとは、オゴリにも程がある!」
 レス・レスの言葉にアダムはにやりと笑い、答える。
「世の中、金と力だ。俺はそれを持っている。それ以上に何か必要か?」
 その言葉に、レス・レスは何も答えなかった。
 いや、答えられなかった。何を言っても、無駄な気がしたからだ。
 だから、下唇を噛んで、ただ睨み返していた。
「レス・レスっ!」
「……これで用件は終わったはずだ、とっとと帰るんだ。……だが、僕は全てを奪ったお前を絶対に許さない」
「くくっ。まあ、せいぜい頑張れ。……よし、帰るぞ」
 アダムが踵を返しながら言うのに、ヴィクトワールたちが答える。それから、歩き出すアダムに着いて行った。
「レス・レス! どういう事だよ、アダムを倒すチャンスじゃないのかよ!」
 熱くなったアッシュが、レス・レスに詰め寄って言う。だが、レス・レスはうつむいたまま何も答えない。
「アッシュ、落ち着いて聞いてくれ。僕の能力では、そして今のみんなの力じゃ、アダムに勝つ事はできない。まだ、戦うには早いんだ……」
 その言葉にアッシュはただうつむいた。理屈はよく分かる。レス・レスの判断が間違っているとは思わない。
 だが、実際戦ったわけではない。戦ってみたら、勝てるかもしれないじゃないか――アッシュはそう思ったのだった。
「必ず、力をつけてあいつを倒すと約束しよう。それじゃあだめかい?」
 それにアッシュは答えない。レス・レスはアダムに勝てないと悟っている。それが伝わるからこそ、アッシュは反論できないのだった。
「……あ〜、あのだな」
 バーニィが、ウララに肩を貸しながら、申し訳なさそうに口を開いた。
「終わったんなら、ウララの傷を直してくれねぇかな」
 それにレス・レスが頷く。ウララに右手をかざすと、ゆっくりと傷が治っていった。
「……ごめん、ウララ。守れなくて」
「ううん、謝らないで」
 バーニィが弱々しく言うと、ウララは申し訳なさそうに目を伏せて、その掴まった肩から離れた。首をぶんぶんと左右に振って、瞳をきゅっと閉じて握った拳を降り下ろし、混乱したかのように続ける。
「私こそ、バーニィの足手まといになってごめんなさい! いつも足手まといになってごめんなさい――」
「――気にするな。俺はお前を守るために生きている、ただそれだけだ。……さ、帰るぞ」
 言って、バーニィはわざと目をそらして手を差し出す。その手を見てから、ウララの視線はその顔に向けられる。
 向こうを見ているのではっきりとは分からないが、それでも彼の顔が赤くなっていることはすぐに分かった。
「――はい!」
 ウララは満面の笑顔で、その手を握り返した。


※登場する団体名・地名・人物などは、実在する名称などとは一切関係ありません。何かに似ていたりどこかで聞いた気がしても、きっと気のせいですので気にせず寝てしまいましょう!

※全年齢向けで書いてるつもりなんですが、「戦い」「人間ドラマ」をテーマの一部としているので、ちょっぴり暴力だったり性的な表現があったりします。あまり気にしないでください。

※本サイトは全ての利用者に対して「エンターテインメイト小説」として娯楽を提供するものであり、閲覧についての保障などは一切いたしません。読んでたら目が痛くなったとか言わない方向で。