「俺は守りたいんだ、仲間を!」 不思議な能力を持った子供たちが送るアクション活劇、ここに開幕! わるいおとなにいたずらしてやるっ!
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Episode3 君は必ず……俺が守る!(1)

 公園で、バーニィは一人で立っていた。

 そこではいろいろな子供たちが遊んでいたが、バーニィはその輪の中には混ぜてはもらえなかった。
 理由は簡単である。
 バーニィは小学一年生の二学期にこちらに転校したきたことが、ひとつ。すでに仲良くなっているクラスメイトに溶け込むのは、意外と難しかった。
 ふたつめは、最近ウッドシティに東洋系の大企業・タチバナ財閥グループの財務を取り仕切るタチバナ・ホールディングスが社ビルを建てたこと。それをウッドシティの住民はよく思っておらず、この時期の転校生というのはつまり、タチバナ財閥と何らかの関係があることを物語っていた。
 バーニィはどうやって輪に入ればいいかも分からなかったし、同時にこれもしょうがないのかなあ、とも思い始めていた。要するに、感覚が麻痺し始めてどうでもよくなってきていたのである。

 その時だった。

「ねぇ、なまえは?」

 不意の声に振り向くと、一人の少女が立っていた。バーニィよりも高い身長で、凛とした雰囲気を醸し出した少女――ウララだった。
「……バーナード」
 当時のバーニィはウララの事を上級生だと思っていた。あまりにもしっかりして見えたし、その荘厳な独特の雰囲気は大人びて見えた。
「わたしはウララ。わたしとあそびましょう、バーナード……いえ」
 言って彼女は微笑んで、右手を差し出す。

「バーニィ」

 バーニィは、その手にゆっくりと、自分の左手を重ねた。

「おはよーっす」
 週明け月曜日の朝、乱暴にドアを開けて入ってきたバーニィは、体じゅうあちこちぼろぼろの姿だった。
「ねぇバーニィ、恥ずかしいからもう下ろして……」
 赤面しながら言うのは、バーニィの背中におぶわれたウララである。
「気にするな。また変な奴が来ないとは限らない」
「私が気にするのよ……ほら、もう教室だから大丈夫」
「……それもそうか」
 ここでやっと、バーニィはウララを背中から下ろしてやる。ウララは赤い顔でうつむいたまま、自分の机の横に鞄をかけた。
「おはよーさん、ナイト様。今日はまた一段とぶっさいくな顔してどうしたんだ?」
 それに気づいて、アッシュが声をかける。
「まったく、どーしたもこーしたもないぜ。あいつら、ウララ一人を誘拐するためだけに一個小隊を持ってきやがった」
「一個小隊……!?」
「なんやそれ、冗談みたいな話やなぁ」
 それを聞いて、ナターリヤとQJも会話に入ってくる。
「んで、それから逃げるためにウララをかかえて屋根の上を猛ダッシュしてきた……ってわけだ」
「……え、じゃあ、ウララはバーニィの能力を知ってるのか?」
 バーニィの話を聞いて不思議に思ったアッシュが、素直な疑問を投げかける。屋根の上から来たのであれば能力を使っているだろうし、背中におぶさっていたウララも当然それを目撃しているだろうからだ。
「ああ、レス・レスに頼んで許可してもらった。ウララは特別な存在だからな」
 "特別な存在"という辺りでウララが頬を染め、恥ずかしそうにもじもじと照れる。
「なるほどな。……というか、そもそもなんでウララはそんなに狙われてるんだ?」
「ああ、ウララはタチバナ財閥の一人娘なんだ」
「たっ、タチバナ財閥といやあ……あの巨大財閥か!」
 アッシュは目を丸くして、驚いた声をあげる。
 タチバナ財閥といえば、ウッドシティを本拠地とする巨大な組織であった。グループ企業は三十社を越え、様々な業界へと進出している。
「そう。タチバナ・ホールディングスがこの街に来た時に、私たち家族も全員こちらに引っ越してきたのよ」
「……なんで普通の学校に通ってるんだ?」
「だって、うちのグループの学校に通うと、先生が変な気を使ってくるし。送り迎えはバーニィがしてくれるから、普通の学校に通っても大丈夫だと思って……」
 ウララは少し言い訳がましく、目線を逸らして答える。隣にいるバーニィがぼろぼろで、迷惑をかけていることを気遣っているらしい。
「なんにせよ、朝から災難だったな」
「まったくだ。明日から夏休みだってのに、本当にツイてない」
 言いながら笑って両手を広げるバーニィに、アッシュたちもつられて笑った。
「はい、おはようございます」
 ドアが開いて教師が入ってくると、クラスがしんとなる。マリレーヌは先週末から姿をくらましており、急遽ティアナという教師が仮担任を務めていた。栗色の髪を肩にかからないようにきっちりと揃えて、そばかすのある、どこか野暮ったい教師という印象だった。着ているパンツスーツも紺色でリクルートスーツにしか見えないが、しっかりと起伏のある体のラインが、女性らしさを物語っている。
「今日は、このクラスに転校生が来ました。入ってください」
 ティアナが言うと、一人の少女が姿を表す。少女はプラチナブロンドの長い髪をツインテールに縛り、白いブラウスに皮のジャケット、下はボーダー柄のミニスカートを身につけていた。白いニーソックスに、派手な赤色の靴を履いている。幼いながらもどこか小悪魔的な美少女で、微笑むと相手を納得させる、独特の威圧感を持っていた。
「えっと、オデットはオデットっていうんだよ。みんな、よろしくね〜♪」
 まるで舞台挨拶でもするかのように、過剰なまでに手を振ってみせるが、生徒たちはドン引きである。その外見に見入っている男子もいるし、異世界の生物を見るかのような目で見る者もいるが、とにかくオデットのそのハイテンションさに誰も答えることができなかったようだった。
「好きなものはカワイイもの。世界じゅうのカワイイものをはべらせるのが趣味です♪ ホラ、オデットがカワイイから、そうしないとつり合いが取れないでしょ?」
 ここでオデットを見る女子たちの目が光る。まるで親のカタキでも見るかのような視線を、オデットに浴びせた。だが、オデットはそれに臆する様子もなく、鼻歌混じりに呑気に席へと向かっていった。
「じゃあ後はジャム、クラス委員としてあとは説明しておいてね。何の係をやるかも決めて」
「はい、分かりました」
 ジャムが冷静に答える。彼女は長い一本の三つ編みにメガネと、真面目の塊でいかにも"委員長"といた面持ちであった。
「じゃあ、ホームルームを始めるわね」
 ティアナの声に、子供たちが元気に答えた。

「なあ……どう思う?」
 アッシュがバーニィにそんなことを聞いたのは、体育の時間にグラウンドでベースボールをしている最中だった。
「?」
 ネクストサークルに立つバーニィが、その次の打順であるアッシュの声に、不思議そうに首を傾げた。
「だから、転校生だよ」
「ああ」
 納得して頷いて、バーニィはぶんとバットを振る。
「ああいうのが好きなのか?」
「ぶっ! 違う、そういう意味じゃない!」
「冗談だ、気にするな。確かに怪しいとは思うけど、そこまで気にするほどでもないと思うな、今んとこは」
「うーん、なるほど。……正直、なんとなく嫌な気がするんだよな」
 アッシュが眉根をひそめて真剣に言うのに、バーニィも向き直る。その真剣味を感じ取ったからだ。
「……どうしたんだ?」
「あいつ、目が怖い。俺が今まで見てきた、ロクでもない大人たちと同じ目をしている気がするんだ」
 不安な表情で言うアッシュに、バーニィはなるほど、と腕を組んで、神妙な表情で頷く。正直、今のバーニィにはよく分からなかったが、アッシュがそこまで言うのを無碍にする気もなかったのだ。
 かきぃん、と金属バットの軽い音が響いて、バッターが走り出した。球はレフトへ向けて地面を転がってゆくが、ショートが華麗にキャッチして一塁へと投げる。その球はバッターより早くファーストがキャッチして、主審がアウトを告げた。
「分かった。一応気はつけておくから、あまり気にするな」
 バーニィは不安そうなアッシュをなだめるかのように微笑んで、バッターボックスへと進んだ。

「だから、いきもの係はオデットちゃんに譲った方がいいと思うの」「だから、いきもの係はオデットちゃんに譲った方がいいと思うの」
「ほら、オデットちゃんはカワイイだけでなく優しいから、きっといきもの係が一番似合うと思うんだ」「ほら、オデットちゃんはカワイイだけでなく優しいから、きっといきもの係が一番似合うと思うんだ」
 放課後、ウララとバーニィの席の前で、何やら騒ぎが起こっていた。
 オデットがうんうんと頷く両脇で、少女が二人、叫んでいる。まるで、ペッツでも出すかのように身を乗り出して同時にやいやいと喋っていた。二人は双子で同じ顔をしており、同じように金髪をカールさせ、同じようにボーダーのシャツに膝丈のデニムスカートを履いており、見慣れた人でも見分けるのが難しいだろう。
 その様子を、ウララの傍らに立つバーニィも、苦虫を潰したような顔でその光景を見つめていた。
「まーまー、マリーもルイーズも落ち着いて。オデットがカワイイのは今に始まった事じゃないから、しょうがないよねっ♪」
 双子に囲まれて頷いていたオデットが、両手の人差し指をぷにと頬につけて、大袈裟に言う。
(まったく、女同士が仲良くなるのは早いもんだな。それより……)
 バーニィはその光景を見ながら、考えていた。おおかた、ジャム委員長と係について話をしたら、いきもの係はウララがやってるから無理だと言われたのだろう。それで何を考えたんだか、ウララに直接文句を言いに来た、というのは想像がついた。
「そんなことを言われましても。私が"いきもの係"なのはたまたまで、一学期通じてやらなければいけないものだと決まっていますから……」
 ウララが冷静に答えた。至極もっともな意見で、そもそもウララに直接交渉をすること自体が間違っているのは言うまでもない。
「あー、とりあえず、ウララは悪くない。文句があるなら、先生に直接言え」
 バーニィが、いつもの表情でしれっと言う。
「じゃあ、こうしよう。オデットとウララが勝負をして、勝った方がいきもの係をやるの♪」
「……お前、俺たちの話聞いてないだろ」
「そうねえ、じゃあ種目は何がいいかな」「そうねえ、じゃあ種目は何がいいかな」
 ウララはその流れに戸惑っていたが、不意に目線を落とし、ゆっくりと息を吐いてから、口を開き始めた。
「……分かったわ。それで私が勝ったら、納得してくれるのね?」
「お、おいウララ……」
 バーニィが慌てて静止に入る。何か余計なスイッチが入ってしまったのに気づいたからだ。
「こうしましょう。今からグラウンドで三対三の騎馬戦を行い、相手のハチマキを先に取った方が勝ち。勝った方がいきもの係をやる――というのはどうかしら?」
「うんおもしろそう! じゃあそれで♪ さ、いこっ!」
 オデットと双子が喜んで教室を飛び出してゆく。ウララはそれを燃える瞳で見送っていた。バーニィはそれに小さくため息をついてから、アッシュに向き直る。
「……というわけでアッシュ、すまんが」
「OK、面白そうだな」
 机に足を乗せて椅子をゆらゆらとしていたアッシュは、振り向いて楽しそうに答えた。


※登場する団体名・地名・人物などは、実在する名称などとは一切関係ありません。何かに似ていたりどこかで聞いた気がしても、きっと気のせいですので気にせず寝てしまいましょう!

※全年齢向けで書いてるつもりなんですが、「戦い」「人間ドラマ」をテーマの一部としているので、ちょっぴり暴力だったり性的な表現があったりします。あまり気にしないでください。

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