学園生活恋せよ乙女っv ガーディアンズは大・変・だっ!

小説・ファンタシースターユニバース Episode2 こちらグラール学園! 1年B組ガーディアンズ科

Prologue 〜芽生え〜

 あたしは、とても幸せなんだと思う。

 明るいママと真面目なパパに愛されて、何不自由なく十五歳まで育った。
 別に反抗期みたいなものもなく、休日には家族で買い物や遊びに行ったりするぐらい仲良し。
 あたしはとても幸せだ。

 そして、あたしにはとても大切な人がいる。

 とはいっても、彼氏とかじゃないよ。憧れはあるけど、そんな経験はまだない。
 あたしが言ってる大事な人ってのは、親友。
 幼い時からずっと家が隣で、いろんな思い出を二人で作ってきた。
 そして、それはこれからもずっと続くんだ。

 新緑と暖かい日射しが新しい季節の到来を感じさせるこの春。
 あたしたちは新しい道を歩き始めたんだ――。

「ネージュ!」
 ミル=ウジェーヌは正門の前で見慣れた少女を見つけて、ぶんぶんと元気よく手を振った。
「おはよう、ミル」
 ネージュは微笑んで、軽く手を振り返す。ミルはそれに、ダークオリーブの長いツインテールを揺らしながらVサインをしてみせる。
 それにネージュは微笑みながら駆け寄ってくる。桜のように薄い赤色の長髪が春の陽気を含んで、柔らかにふわりと揺れた。
「朝は、目覚ましが鳴る五分前に目が覚めたの。朝食のハムエッグに使った卵は、黄身が双子だった。玄関から出て一番に見かけた人はイケメンだったし、"目覚ましグラールチャンネル"の占いランキングで、おうし座の運勢は最高だった。――だからネージュ、今日は素晴らしい一日になると思わない?」
 まるで演説のように、拳を握りしめて大袈裟に語るミル。彼女はニューマン特有の、長い耳を持っていた。ツインテールを水玉のリボンで結び、紺色の制服を身に纏っていた。ベストのような上着に長い袖、下には白色のシャツ。薄緑色のネクタイが白と紺に爽やかなコントラストを与える。下はラインの入ったスカートで、膝丈が標準なのだがやはり短い方が可愛いので、丈を少し詰めるのが流行っている。
 それが、彼女たちの制服だった。
「うん、今日はいい日になるよ」
 ネージュは微笑みながら答える。彼女もまた、ミルと同じ制服を来て、その長い髪を揺らしながら正門へ向き直る。
「だって、今日から私たち、高校生になるんだもん」
 正門には“星グラール学園高等部・入学式“と書かれた立て札が立てられていた。


「はああぁぁぁ――!」
 ミルはウォンド――長さ一メートルほどの片手で扱う杖――を振りかぶると、ぐん、と眼前に突き出す。側頭部でまとめたツインテールの髪と、水玉のリボンが勢いでふわりと揺れた。
 彼女の大きな瞳は真剣な視線で、五メートルほど離れた所に立てられた人間大のマネキンへと注がれている。
「燃えちゃえ――フォイエっ!」
 その杖先が赤く染まり、周囲の空気を吸い込むかのように渦巻くと、直径三十センチほどの炎の球が形成される。少女が杖を振りかざすと、炎の球は勢い良く飛び出してマネキンへと叩きつけられる。ごう、と激しい音が鳴って炎が砕け散ると、その衝撃に大きく揺れた。
「ミル=ウジェーヌ――OK。初めてにしてはスジがいいな」
「いえーい!」
 教師らしい男性が、手元のバインダーにさらさらと何かを書き込んで、大きく頷いた。ミルは両手の拳を握りしめ、大袈裟にガッツポーズをとってみせる。
「だが、法撃力の安定性に欠ける。テクニックは感情や精神状態に左右されやすいから、気を抜かないように」
「はい!」
 ミルは元気に片手を振り上げると、嬉しそうな顔で答えた。

 テクニック――この世界では一般的に存在する、万物を司る光子である“フォトン“のエネルギーを使用し、医療や工業に役立てるために理論体系化された技術である。それらはいつしか戦闘技術へと転用され、炎を出したり目標の身体能力を活性化したりと、様々な応用のきく技術となっていたのだった。


「ええぇぃっ!」
 ネージュは、全長二メートルを越える長剣を振り上げると、力まかせに左へと薙ぎ払った。フォトンの刃が煌めく軌跡を残し、半径二メートル以上の弧を描く。そこで彼女はその凄まじい勢いをぴたり、と止めると、今度は返す刃で右側へと剣を振る。
 赤く光る瞳とビーストらしい特徴のある鼻が、弱気ながらも真剣な表情を見せていた。
「やあぁっ!」
 剣の勢いで激しい風圧が生まれ、長い髪とスカートをはためかせる。その中心に立つネージュは、堂々と前を見据えていた。
「ふむ、ネージュ=ブリュショルリーか……豪快で実直な太刀筋だ。いい素質を持っている」
「ううっ……私、戦いなんて好きじゃないのにぃ……」
 教官らしき男性は誉めているのだが、肝心のネージュは別に嬉しくないらしい。彼女はしょぼんとうつむいて眉根を寄せて、複雑な表情で答える。ビーストらしい体毛の生えた耳が、ぺたんと垂れてしまっていた……。


 キンコーン、カンコーン。
 夕方になって、下校時間を表す鐘が辺りに鳴り響いた。惑星パルムのホルテス・シティの中心にそびえるそれは、流線型の大きなフォルムでその存在の大きさを存分にアピールしている。正門には“星グラール学園“と書かれていた。
 学園は中高一貫教育の全寮制学園で、星霊を万物の祖とあがめる“グラール教団“の敬虔な信者たちによって設立された。星霊の教えに従い社会に役立つ人材を育てる、というのがその教育理念である。
 グラール教の学園ながらパルムに学園が設けられたのには、少しだけ政治的な理由がある。この計画はもちろん、グラール教団が先頭に立って行われた。だが、この計画には教団だけでなく、パルム最大の機械工学企業“GRM“社、三惑星の治安維持を目的とする“同盟軍“、ならびに民間警護会社“ガーディアンズ“も賛同し、資金援助を行っていた。その割合が、教団より大きかったのである。
 なおかつ、パルムは三惑星の中で最も人口が多い。それが決め手となり、ここパルムに学園が設立されたのだった。
 そのような事情から、この学園には他にはない独特の学科が存在している――。


「やっぱり、今日はいい一日になった!」
 ネージュと一緒に校門を出ながら、ミルは突然握り拳を作って振り上げてながら、元気そうに言った。それにネージュはこくこくと頷いて、
「そうだね、ミル」
 と、勢いに押されたようにたどたどしく言って、もう一度頷いてみせた。
「でっしょお? だから、あたしたちの未来は順風満帆なワケ!」
「……そうだといいんだけど――大丈夫かなあ……」

 そう、星グラール学園には、独特の学科がある。

 それが、“ガーディアンズ科“というものだった。

 高校一年からの三年間、ガーディアンズ科を専攻した生徒はガーディアンズ入隊を目指し、通常の学業に加え実践での訓練を受ける。

 つまり、“護りかた“を学ぶのだ。

 ミルとネージュはこの春、高校一年生になったばかり。
 仲良くガーディアンズ科を専攻した二人だったが、これからどのような運命が待ち受けているのか――。


 三つの惑星と太陽から成る、"グラール太陽系"――。我々の住む世界と大きく違うのは、"フォトン"と呼ばれるエネルギー粒子が文明を支えていること。
 ここには、四つの種族が生きていた。全ての種族の祖となるヒューマン、"デザイン・ヒューマン計画"で作り出されたフォトンの扱いに長けたニューマン、厳しい環境での活動のために作り出された生命力旺盛なビースト、自我を持つ自立型ロボットであるキャスト。
 四つの種族は五百年に渡り、長い戦争を続けていた。だがそれも落ち着き、"タルカス三惑星同盟"という和平締結により平和が訪れて百年以上が過ぎていた。
 "ガーディアンズ"とは、その和平締結の後に政府の資金援助によって設立された特殊会社だった。三惑星の治安を維持する太陽系警察だけでは各地の武装勢力を抑えることができず、それを補佐するために設立されたのだ。その存在は民間人にも広く認知され、自治区として認められた"ガーディアンズ・コロニー"を本拠地として活動しているのだった。

 ヒューマン原理主義を掲げる武装集団"イルミナス"によるコロニー襲撃が大きな傷跡を残し、リュクロスの封印によりSEEDが封印されてから、三年。
 グラール太陽系は今、別の危機に見舞われていた。資源の枯渇が危惧され、人々の間ではその打開策が期待されている。近々惑星移民計画が発表されるのではないか、と噂も流れつつあった。

 ――この物語は、そこから始まる――……。

こちらグラール学園! | ――この物語は、そこから始まる――……。

 

(c)2009 isanaradio.com All Rights Reserved.