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PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる時の半世紀の終りに〜 universe64 決着

 モトゥブ、13:28。
 爆音と共にレーザーの雨が降り注いでいた。激しい爆発が起こり、地面から土埃が舞い上がって日光を遮る。
「げほげほ……」
 ランディは咳込みながらも、土埃の中で座り続けていた。
 すぐに視界がクリアになってきて、状況が少しずつ見えてくる。その光景に、目を丸くした。
「おいおい……衛星からの射撃でこの命中精度かよ?」
 ランディは、苦笑しながらそう独りごちるしかなかった。
 地面に見えるのは、直径30メートルほどの巨大なクレーター。表面はぼこぼことへこみ、その深さは1メートルほどと浅かったが、レーザーということを考えれば充分すぎるほどの威力があることを物語っている。
「跡形もなく……か?」
「残念ながら」
 クレーターの淵に立っているアナスタシアは、ランディの独り言に振り向きもせず答えた。首を小さく左右に振ってから、クレーターをゆっくりと指さす。
 ぼこっ、と土が盛り上がったかと思うと、潜水した者が海面に飛び出すかのようにプルミエールが飛び出してきた。
「ぷはぁっ! もー、服が汚れちゃった」
「……モグラか、あいつは」
 プルミエールは、レーザー照射の瞬間ハンマーで地面を叩いて掘り、レーザーの影響を最小限にとどめたようだった。それを僅かな時間で行ったのだから、ランディが苦笑しながら呟くのも無理はない。
「あの一瞬でよく逃げられましたわね……」
「私がこれぐらいで負けるはずないじゃん! さぁてっ、ROUND 2といきましょっ、おねえさま♪」
 埃を払いながら構えて、プルミエールは無駄に元気に言う。ボディは所々ぼろぼろになっており、ひどい所は人工皮膚が剥がれてしまっているが、それでもまだ稼働限界に余裕があるようだった。
「――お望み通り、スクラップにして差し上げますわ」
 少し苛ついた口調で言って、アナスタシアは走り出す。プルミエールはそれを見てにやにや笑いながら、鎚を構え直した。
「はッ!」
 アナスタシアのダガーが襲う。右、左と基本的な連撃から、足首を狙ったローキック。プルミエールはそれを柄で受け流しながら、防戦一方を強いられる。
「おねえさま、早すぎ! 早すぎるのは嫌われるのよ?」
「……戯言を」
 アナスタシアのダガーがプルミエールの胸を切り裂く。一本の筋が火花となって飛び散り、服を切り裂いて人工皮膚に線を残す。
「ちょ……おねえさまのえっち!」
 言いながらプルミエールはローキックを放つ。ちょうど飛び退こうとしていたアナスタシアの軸足に当たり、アナスタシアはわずかにバランスを崩す。
「え……?」
 アナスタシアは一瞬何が起こったのか、判断できなかった。崩しかけた体勢で無理やり飛び退いて、距離を離す。
「なるほど、蹴りも効果的なのね。おーぼえた♪」
「!」
 アナスタシアはぎょっとした顔でプルミエールを見つめていた。
 ……この短期間で蹴り技まで修得したというのですか――?
「えいっ!」
 プルミエールは短く握ったハンマーを振り回す。アナスタシアがそれをかわしても、下段へのローキックで追いかける。読まれないように攻撃を上下に振っていた。
「器用な……!」
 大振りの隙に懐に飛び込みたい所だが、それを蹴りで補っているため、アナスタシアはタイミングを掴めないでいた。普段自分がやっている事なのだが、その対処がこれほどまでに面倒だとは。
(……早く片づけなければ……どうすれば)
 アナスタシアは焦っていた。すでに戦闘開始から予測以上に時間が経過している。早く片づけてコロニーに戻らなければ。
 プルミエールはこちらを倒す気があるのか無いのか、深く踏み込まない攻防を繰り返している。時間稼ぎの意味もあるのだろうが……。
「……そうですわ」
 アナスタシアはぼそりと呟いた。リスクは高いが、やってみる価値はある。
 ゆっくりと息を吸って、それからばっと後ろに飛び退いた。わざと足を止めて、様子を見る。
(彼女は怠慢で大雑把な思考傾向がある。……そこを突けば……)
「つかまーえた♪」
 プルミエールは一気に距離を詰めて、ローキックを放つ。アナスタシアは体重を預けていた左足をすくわれ、バランスを崩す。そこを追い打ちのように槌で左へと薙ぎ払われ、咄嗟に体を守ろうと突き出したダガーを大きく弾かれてしまう。その勢いに押されて、アナスタシアは地面に尻餅をついてしまった。
「うっふっふ、おねえさま絶体絶命! 私は絶対可憐! どうする♪ どうする♪」
 見下ろしながら、プルミエールはいやに楽しそうな声で言った。だがアナスタシアはそれをただ冷静に見上げたままで、小さく口を開く。
「……まぁ、所詮はこの程度でしょうね。大きく振りまわすしか能の無い攻撃ですわ」
「……おねえさま? どういう意味?」
 プルミエールの声は、明らかにムッとした野太い声。わずかに震えて明らかに感情がこもっており、苛ついているのがはっきりと分かった。
「今、地面に這いつくばっているのはおねえさまの方でしょ!? なんでそんな余裕の発言が出てくるのさ!」
「――さぁ?」
 明らかに怒り心頭といった口調でプルミエールが喚き散らすのに、アナスタシアはわざとおどけて両手を広げながら言ってみせた。それにプルミエールは、人工皮膚のほとんど剥げた顔で眉間にしわを寄せる。
「おねえさまの負けなのよっ! そう、勝つのは私なんだからっ!」
 プルミエールは叫びながら、ハンマーを頭上に高く掲げる。次の瞬間、両腕の外装がばかっと開いて中から筒状の金属が飛び出した。
「いっけぇ! 私のハンマーが真っ赤に燃えるゥ! お前を倒せと輝き叫ぶゥ!」
 ごうっと音がして、そこからフォトン粒子が吹き出す。バーニアを腕に内臓していたのだ。
「必殺ゥ! シャアァァァァイニング・ハンマアアァァァァッ!」
 フォトン粒子がきらきらと輝き、ハンマーは鈍い光を放つ。振り上げた腕がものすごい勢いで振り降ろされ始め、転倒したアナスタシアを襲う――。
「……」
 アナスタシアは座ったままで、それを見上げて睨みつけていた。
「アナスタシアっ――!」

 ランディの声は途中でかき消され、どぉぉん、と激しい音と共に地面が揺れた。

 ハンマーを中心に激しい土埃が舞い、まるで局地的な竜巻でも起こったかのように、激しい上昇気流が巻き起こる。
「おねえさま……」
 ごおおお、と僅かな余震で空気が揺れていた。巻き起こった土埃の中から、プルミエールの声が静かに聞こえる。
「やっぱりおねえさまは旧型なんだわ。これで私がいっちばん♪」
 プルミエールはぴょんぴょんと飛び跳ねて笑いながら、鎚をぶんぶん振り回している。
「――!」
 ランディは、その光景を呆けた顔で見ていたが、すぐに我に返る。それから笑顔でプルミエールを指さしながら、
「あっはっは、なるほどそういう事か!」
 と、笑いだした。あまりにも場違いなその声に、プルミエールは不信な視線をぶつける。
「こら、@#!けもの。あんたうるさいよ」
「いやー、アホメイドにゃ勝ち目がねぇってのはよく分かった」
「なんでよ! 見ての通り、倒したじゃない!」
 ぎゃあぎゃあ喚き散らすプルミエールの視界が、急にがくんと揺れた。軽い衝撃の後、視界の中心から暗闇が広がってゆく――。
「……え? 何これ?」
「相手が悪かったですわね」
 後ろから聞こえるアナスタシアの声。プルミエールは弾かれたように振り向こうとしたが、がつっと音がして首が動かない。
「え? え?」
「これで大道芸は終わりでしょうか?」
「ちょっと、何これどゆこと? なんでおねえさまの声が聞こえるの?」
 プルミエールは混乱した。何が起こっているのか、さっぱり分からないのだ。
「くっくく、お似合いだぜ、その顔! あっはっは」
 プルミエールの顔は、変わり果てていた。

 右目からダガーの刃先が、突き出していたのだ。

 後ろにはアナスタシアが立っており、右腕を上に伸ばして後頭部からダガーを突き刺していた。
「あれだけ予備動作の大きい攻撃を放つ時は、相手が動けない事を確認してからでないと手痛い反撃をもらうだけですわよ?」
「ちょ、なんでおねえさまは無傷なのよう!」
「リミッターを解除して、一時的に素早い動きを可能にしたまでですわ。もちろん、リアクターに負荷がかかりますので、長時間の運用はできませんが」
 アナスタシアのボディは、胸の部分が開かれて何本ものコードが垂れ下がっている。そのコードは、フォトンを動力に変える炉であるフォトンリアクターのものだった。
「くっ……」
 プルミエールが歯をぎりぎりと鳴らしならが、呻き声を漏らす。
「――ゆっくりと休まれるといいですわ」
 アナスタシアは言いながら右手を上に押し上げる。右目から飛び出した刃先は額を切り裂き、頭頂部から姿を表した。
「え? なに? なんなの? ちょっと、どうなってるの!?」
「五月蝿いですわね」
 アナスタシアは引き抜いたダガーをもう一度握り直して、2つに割れた頭部に突き立てる。ばちばち、と火花を飛び散らせながら、刃先が口から飛び出した。
「がぴゅっ」
「……?」
 ふと、アナスタシアは、その切れ目に目線を落とした。まじまじと見つめながら、気難しい顔をしている。
「どうしたんだ?」
 それを不思議に思って、ランディが駆け寄りながら声をかけた。
「本来、あるべきものがありません」
「?」
「メインコンピューターですわ。"脳"と言った方が分かるでしょうか」
「なるほど。でもまあ、こいつアホだから脳が無いんじゃねぇか?」
 ランディがまじまじと頭の中を覗き込んで呟く。確かにそこには機械部品が詰まっているだけで、肝心のメインコンピューターらしきものが見当たらない。
「誰がアホだー! アホはお前だこの@#!けもの!」
「!」
 プルミエールの声がいきなり響き渡る。2人は思わず、弾かれたように辺りを見回した。だが、不信なものはまったく見当たらない。
「……そういえば前にモトゥブで会った時も、頭取れても大丈夫だったな、こいつ」
 言ってランディは、プルミエールの体をじろじろと見回す。見ると、背中に僅かだが不自然な起伏がある。おもむろに後ろの襟首を掴んで、そのまま衣服を引き裂いた。
「……あれ、ばれちゃった。はろー♪」
 剥き出しになった人工皮膚の背中。そこにもう一つ、顔があった。
「はろーじゃねえ」
「痛い!」
 ランディが条件反射のみで裏拳を叩きこんでやった。ツッコミにしては威力が大きすぎるのか、プルミエールはのけぞって鼻からオイルを垂らす。PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe64 決着
「まあ、メインコンピューターは普通は頭にあるもんだと思うからな。……まあとにかく、こいつはまだ動けるわけか」
 言いながらランディは手錠を取り出して、プルミエールに後ろ手にかける。それから足にも同じようなものを取り付けた。
「あ! ちょ、おま」
「さあ、こいつを連れて早く戻ろうぜ」
「……その前に」
 振り向いて歩き出そうとしていたランディに、アナスタシアはうつむいたままで静かに答える。
「プルミエール……あなたは先ほどわたくしの事を『やっぱり旧型なんだわ』……と申していましたわね。そして、何故わたくしの中に見覚えのない映像が残っていたのか、何故わたくしは名も無き少女に似ているのか――あなたは一体、何を知っているのです?」
「私何も知らなーい……痛い!」
 今度はアナスタシアの拳が顔面を打った。ランディより威力は小さいだろうが、正確に眉間を狙っているあたり本気でタチが悪い。
「その美しい御顔をさらに綺麗にして差し上げれば、少しは話す気になるかしら?」
「ええっ……でも、バーバラさまから口止めされてるんだモン♪」
「ああでも、口が無くなると喋る事すらできませんわね……」
「うっ……口が無いと前戯できなくなっちゃう。……もうッ、話せばいいんでしょ、話せば!」
 やけくそ気味にプルミエールは言って、大きなため息をついた。
「私は、おねえさまを元に作られた、コピーなんだよね。性能やデータはもちろん最新だし、おねえさまに負けるはずがないのに」
「問題は性格だろ」
「なんだとー!」
 ランディが言うと、プルミエールは怒った顔で喚く。ランディはそれを気にせず冷たい視線を向けながら、中指を親指にかけた状態で額に近づけてやる。いわゆる"デコピン"だ。それにプルミエールは「ひぃぃっ!」と必要以上に驚いてみせた。
 そんな光景は露知らず、アナスタシアは唖然とした顔で口をぱくつかせていた。
「ちょ、ちょっ……ちょっと待ってくださいませんか? 何故、コナンドラムがわたくしのコピーを作る事ができるのです……?」
 そこまで言って、アナスタシアはハッとした顔になり、ゆっくりと目が座り始める。様々な記憶が、頭の中を駆け巡っていた。
 ……バーバラは、初対面のはずのアナスタシアの名前を知っていた。自分の行動を全て覗き見ていた、とのことだったが、カズンが今までの定期メンテナンスでその原因を発見できなかった理由が分かった。

 製造された時点からずっと、体内にあったからだ。
 それもおそらく、ハード的にではなくソフト的に。

「ということは――わたくしは、カズンに作られたのでは……なかったのですか……?」
 アナスタシアが独りごちるのに、ランディが視線をそらす。それはもう、返事をしているようなものだった。

「まさか。まさか。まさか。まさか。まさか。」
 両手で頭を抱え、壊れたように同じ単語を繰り返すアナスタシアを、ランディは心配そうな視線で見つめていた。思わず手を伸ばすが、そこから先へ動かすことができない。
「気づいちゃった? おねえさまのコピーを簡単に作るにはさ、"おねえさまを作った"人がいないと無理なのよねー」
 その言葉が意図する事に、やっとランディも気づいた。嫌な汗がひとつ、額からゆっくりと頬を流れてゆくのをそのままに、次の言葉を待つ。
「16年前、バーバラ様は思ったわけ。"英雄候補と自分の記憶を結び付けたら、どんな人格ができるのだろう"ってさ。それで、ダークファルスと戦って死んだ少女の遺体を入手したの。そして、自分と名も無き少女の2つの記憶を使ってキャストを作った、ってわけ」
「まさか。まさか。……まさか。まさかわたくしは……」
 プルミエールはゆっくりと軽く息を吐いて、続けた。瓢々とした口調は説得力こそ無かったが、この重い空気には場違いで、それが異様な恐怖を煽っていた。
「そうだよ。おねえさまは、バーバラさまと名も無き少女の記憶を使って、バーバラさまに作られたキャストなの」

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※この物語は株式会社セガが提供するオンラインゲーム「ファンタシースターユニバース」を題材としたフィクション(二次創作物)です。世界観、固有名詞、ゲーム画面を使用した画像など、ゲーム内容の著作権は株式会社セガにあります。
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