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PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる時の半世紀の終りに〜 universe50 時は流れて

 それから、時間が流れた。
 秋が過ぎ、冬になり、年の節目まであと少し――しばらくの時間が流れていた。

「……最近おとなしいよな、あいつら」
 歩きながら退屈そうに両手を伸ばして、ランディは言った。
「そうだね。不気味だよね〜」
 アンドリューがいつもの調子でそれに答える。
 "あいつら"というのは言うまでもなく、コナンドラムの事だった。ここ数ヶ月、不気味なほどにまったく動きが無い。諜報部も躍起になって探し回っているが、まったく尻尾を掴めない状態に焦りを感じていた。
 その上、ダークファルスを復活させると言っていた"合"の時にも何も動きが無かったのである。封印装置起動のための厳戒体制に諦めてくれたのであればそれでいいのだが、今までの流れからそれは考え難い。とてもそうとは思えなかった。
 だが、結果としてガーディアンズは封印装置の起動に成功し、SEEDの落下を防ぐ事に成功していた。だが、その任務を成功させたガーディアン、イーサン・ウェーバーは総統暗殺未遂事件を起こし、その姿をくらませていたのである……。
 そんな折、ランディとアンドリュー、それにDeo pomumのメンバーたちはパルムの森の奥にいた。ホルテス・シティより北東へ200キロの所で新しいレリクスが発見され、これもどうやらダークファルスを奉っているという。ちょうど、その探索に向かっていたのだった。
「まあ、今回の任務はそれほど難しいもんじゃねぇだろ? とっとと片づけちまおうぜ」
「そうですね、それほど危険なものでもないでしょうし」
 ランディが肩を回しながら言うと、エレナもそれに同意する。
「だね。……あ、ちょっとごめん」
 言ってアンドリューが携帯端末を取り出した。
「はい。……あ、アナスタシア、どうしたの? ……うん、これからランディやDeo pomumのメンバーと任務に向かう所。……うん、ちょっと遠い。……うん、分かった」
 それだけ言うと、アンドリューは携帯をしまう。
「? どうしたんだ?」
「詳しくは分からないけど、モトゥブの任務で緊急召集だったみたい。遠い所にいるって言ったら、『任務の成功をお祈りします』だって」
「ふ〜ん……そっちに行かなくて大丈夫か?」
「多分。アナスタシアは、必要なら最初からそう言うだろうし」
 アンドリューが答えて、ランディはなるほどと頷く。
「まあいいや。こっちはこっちで仕事するか。ルディも待ちくたびれてるだろうしな」
「うん、そうだね」
 言いながらアンドリューも、歩みを早めた。

「早く! もう出ますわよ!」
 アナスタシアがシャトルの乗り口から上半身を出して、腕を振り回していた。
「ちょ、待って下さいっス!」
「もう、何なのよ一体!」
 ウィンドとヴァルキリーが、愚痴りながら走ってゆく。ウィンドは上着を片方しか羽織れていなかったし、ヴァルキリーも口にチキンをくわえたままだ。
 2人はばたつきながらもシャトルに飛び乗る。すぐに扉が閉まり、シャトルが動き始めた。PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe50 時は流れて
「はぁ、はぁ……っ、ねえアナスタシア、一体何なの?」
 席につきながらばたばたと掌で仰いでから、ヴァルキリーは口を開く。
「ついに、動き始めたようなのじゃ」
 後部座席に乗っていたメァルが、静かに言った。
「姫の言う通りです。本日午前11:36に、モトゥブでコナンドラム兵と思われるキャスト兵が確認されました」
「!」
 一同が驚いた顔でアナスタシアを見つめる。ウィンドもヴァルキリーも、口をぽかんと開けたままだった。
「しかも、それらを率いていたのは、バーバラ本人」
 言い終わってから、アナスタシアは下唇を噛む。二度も受けた、忘れることのできない屈辱。
「なるほど……それで緊急召集がかかったわけっスね?」
「そうです」
「しかし、集まりが悪いね」
 ヴァルキリーがチキンの骨をナノトランサーに放り込みながらシャトル内を見回し、素直な感想を述べる。
「仕方ないじゃろう、ここしばらく平和じゃったからの。いつも通り通常任務を受けておる者がほとんどじゃ」
「その通りです。ランディ、アンドリュー、Deo pomumのメンバーはパルムのレリクス探索に向かっていますし、先生もファビア、ネイ、オルハ、テイルを率いてニューデイズの怪奇現象の調査に向かっていて、すぐに動けないようで……」
「怪奇現象って、例の"カミカゼ"っスか?」
 ウィンドが跳ねる呼吸を抑えながら、会話に入ってくる。
「そうです。いきなり風が吹いたかと思うと全身バラバラにされてしまうという、恐ろしい事件ですわ」
「証拠がまったく出ていないんだっけ?」
「ですわ。目撃者は少なからずいるのですが、皆言う事は同じ。"いきなり目の前でバラバラになった"」
 全員が息を飲む。まるで怪談の落ちのような状況と、抑揚の少ないアナスタシアの声が、より恐怖感を煽った。
「すでに死者も出ており、危険な状態ですわ」
「またイオリとかいう奴じゃないっスか?」
「残念ながら、違うようですわ。傷もフォトン傷ではないし、そもそも痕跡が何も残っておりませんから」
 ウィンドの質問に答えてから、アナスタシアは大きなため息をついた。
 ふと窓から外を見て、モトゥブが近くに見えるのに気付く。

 ……バーバラと初めて会ったのも、モトゥブだった。
 あの時受けた屈辱は絶対に忘れない……。

 必ず自分の手で打ち倒すと、アナスタシアは心の中で誓った。

「で、先生。"カミカゼ"を追う方法、なんかあんの?」
 ニューデイズのスペースポートに降り立ってすぐに、オルハが口を開いた。
「とりあえずは情報収集でしょうね。調べる必要のある場所は多いでしょう」
 代わりにファビアが答えた。足元ではネイが、意味も分からず何度も頷いている。
「つまり結局は、足で探すしかないというわけだな」
 テイルが腕組みのまま何度か頷いてみせるのに、アルファも頷いた。
「まぁそうなんだけど……気になる点が2点あるの」
 アルファは言いながら端末を取り出す。
「1つ目はグラール教との関係。イオリの時みたいに、政治的理由で調査が滞るのは困るから。2つ目は被害者と目撃者の聞き込み。聞き込みは太陽系警察がもうやってるんだけど、ガーディアンズ側での捜査はまだだから」
「……要するに足で探さなきゃいけないんじゃん」
 オルハがそれを聞いて、露骨に嫌そうな顔で答えた。教団と目撃者と被害者、それら全部の話を聞いてまわるのは、正直面倒だ。
「まあ、それはしょうがないでしょう。情報が無ければ動けませんから……にしても、アルファ先生が直接動くということは、ガーディアンズはこの事件を重く見ているのでしょうか?」
 ファビアが言って、真剣な表情でアルファの方を振り向いた。
「いえ? 最近は随分とコナンドラムが大人しかったから、ちょうど私の手が空いていたの。それに私も一応、機動警護部に所属しているわけだしね……さて」
 説明が終わると、アルファは軽く手を叩いた。
「とりあえず手分けして情報収集しましょう。テイルはファビアとネイを連れて、被害者と目撃者の情報を再確認してきて」
「了解」
 テイルは端末の画面を指で叩きながら答えた。
「オルハは私と来て。星空殿に行くから」
「おっけ! あー、そういえば今イチコいないんだなあ」
「? そうなの?」
「うん。ほら、もーすぐ昇任試験だから、猛勉強中」
 オルハはつまらなそうにかぶりを振りながら、答えた。
「そっか、それは残念ね。でもまたすぐ会えるわよ、きっと。……じゃあみんな、お昼にオウトク支部で待ち合わせましょう」
 その声に全員が頷いた。

「さて、と……こりゃまた古いレリクスだな」
 中に入って、ランディが思ったままの言葉を言った。レリクスの中はいかにも旧文明のもので、無機質と有機質が不気味に交錯している。
「調査隊の情報によると、モンスターの存在は無いようです。最下層に祭壇みたいなものがあるだけの、小さなレリクスです」
 ラファエルが端末を見ながら言う。
「ああ。調査隊からも、"目ぼしいものは何も無し、最深部に巨大な像があるのだけが特徴"って報告を受けてる」
 ルディがそれに答える。このレリクスを最初に発見し、ガーディアンズに情報を持ち込んでくれたのはオラキオだった。調査隊もオラキオとガーディアンズが合同で派遣し、調べられる所はすでに調べてしまっていたのだった。
「それじゃあまあ、軽く片付けちまうか」
 ランディが腕をぐるぐる回しながら、奥へと歩き始めた。
「……しっかし、気分の悪い場所だ。ダークファルスってやつの影響力が、これほどまでとはな」
 辺りを見回しながら眉根をひそめて、シロッソが呟く。
「体にフォトンの流れがまとわりつく……不快極まりない」
「はい。ここは気分が悪いですね……」
 それにエレナも同意して、こめかみを押さえながら首を左右にぶんぶん振る。その動きで大きな胸が揺れるのを見てしまったランディとルディは、そのダイナミックさに一瞬視線を奪われてしまったが、咳払いしながらわざとらしく視線を強引に引き剥がす。
「……まあなんだ、感覚が鋭いってのも大変だな」
「だよね」
 ランディの呟きにアンドリューが同意する。
 フォース、特にニューマンはフォトン感知能力が鋭いため、場のフォトンの流れに影響を受けやすい。逆に、機械の体のため素養の無いキャストや、精神より肉体に特化しているビーストは、その影響をほとんど受けない。むしろ、"気づかない"と形容するほうが正しいのかもしれなかった。
 特に、ここはダークファルスを奉っているような場所だ。どす黒いフォトンが場を満たしているのは、当然だと思えた。
「……鈍くて良かったかもしれねぇな」
 ランディが素直な気持ちを呟く。それは深い意味を持たず、素直な心の言葉だった。
「……ビーストってのは、どうしてこうも大ざっぱな作りの連中ばっかなのかね」
「本当に。ラファエルの爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいです」
 シロッソとエレナがわざと聞こえるように皮肉めいた口調で言う。それにランディは、ただ苦笑するしかなかった。
「……お言葉ですが、エレナ様」
 ふと、ラファエルが神妙に口を開く。エレナは不思議そうにそれに振り返った。
「我には煎じる爪がございません。あと、我もキャスト故、この場のフォトンの流れをまったく感知できないのですが……」
 今度は、エレナが苦笑する番だった。それを、ランディは指をさして笑っていた。

「あ、バーバラさま?」
 プルミエールが軽い口調で携帯端末に向かって言う。
「早速動きがあったんで、伝えとくよ。あの勇者気取りとガーディアン3名が、そちらへ向かっている」
 画面に移るバーバラの顔はにやにやと笑い、それは生理的に不快感を煽る表情だった。
「あら、さすがに動きが早い」
「今回の目的は――分かっているな?」
「もっちろん! ちゃちゃっと片づけてすぐに戻りま〜す♪」
「ボディパーツの準備、捕獲部隊の待機は完了している。それに近辺の立体地図も先ほど送ったから、メインメモリに叩きこんどけ。準備は万端だ、何の問題はないだろう」
 バーバラが言うのに、プルミエールもまた、にやにやと笑いだす。
「それでバーバラさま……おねえさまと遊んでもいいのよね?」
「構わんよ、目的さえ達成できれば。好きなだけ遊んで構わん」
「ようし! じゃあ頑張っちゃいます!」
「お前は私が作った最高傑作だ、それを忘れるな。――じゃあ、任せたよ」
 バーバラが一方的に言って、通信を切断する。いつものことなのでプルミエールも気にせず、端末をしまった。
 プルミエールは辺りをぐるりと見回してみる。ここはモトゥブ奥地の谷で、崖が多く道が悪い。空はどんよりと曇り、切り立った岩と相まって、お世辞にも見晴らしの良い光景とは言えなかった。傍らではキャスト兵が待機しており、ぴくりとも動かず整列したままだ。
「あ〜あ、なんか寂しいとこだな、つまんないの。エスコートしてくれるのも無骨な奴らだし」
 呟いて、プルミエールはがっくりと肩を落とす。あまりに華やかさの無い光景と、無骨なキャスト兵たち。そんな状況に、モチベーションが上がらないようだった。
「でも、頑張らなくちゃ。私はバーバラさまの最高傑作! 旧型なんかに負けるはずないんだから♪」
 いきなり元気になったかと思うと、スキップしながらくるりと回ってみせる。スカートが風をはらんでふわりと揺れ、乙女らしさを垣間見せるが、どうにもそういうキャラには見えない。
「そして私の活躍は"魔法少女プルミエール"って感じで、一見女児向けのアニメになって未来永劫語り継がれるのよ♪ 主に大きなおともだち達に!」
 意味不明な事を言いながらいきなり二の腕のカバーを開くと、小さな赤いスイッチに指をかける。
「じゃあ、いきましょうかね♪ 今日のびっくりどっきりメカ! ぽちっとな!」
 そのスイッチを強く押し込むと、ジジジ、と不気味な音が鳴りながら、プルミエールの体にノイズが走り始めた。

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注意事項

※この物語は株式会社セガが提供するオンラインゲーム「ファンタシースターユニバース」を題材としたフィクション(二次創作物)です。世界観、固有名詞、ゲーム画面を使用した画像など、ゲーム内容の著作権は株式会社セガにあります。
※小説作品としての著作権は勇魚にあります。
※登場する団体名・地名・人物などは、実在する名称などとは一切関係ありません。
※作中の表現や描写、ならびに使用している画像などは、ゲーム内で再現できるものとは限りません。
※この作品は、「戦い」「人間ドラマ」をテーマの一部としているため、暴力・性的な表現を含む場合があります。予めご了承下さい。

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