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PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる時の半世紀の終りに〜 universe45 それから

 今日もとてもいい天気だった。外からは柔らかで澄んだ日差しが差し込み、間もなく到来する冬を物語っている。
 アナスタシアは窓のカーテンを開けてから、大きく伸びをする。すでにボディパーツも身に着けており、出かける準備は万全だった。
「アナスタシア、起きとるか?」
「はい、大丈夫です」
 カズンの声がドアの外から聞こえるのに、アナスタシアは言いながらドアに近づいて開ける。
「おはようございます、カズじぃ」
「ああ、おはよう。朝からなんじゃが、お前さんさえよけりゃ朝食の前に腕を着けてしまおうと思うんじゃが、どうじゃ? 予定よりちょっと遅くなってしまっとるしな、早い方がいいだろうよ」
 確かにアナスタシアは、気付けばもうここに3泊もしてしまっている。アームパーツの在庫が無かったため、入荷に時間がかかってしまっていたのだ。
「……そうですね、早い方が良さそうですわ」
 少し考えてから、アナスタシアは答えた。ここ3日間は代わりの腕を着けていたが、ただのロボットアームのようなものでお世辞にも使い勝手の良い物ではない。早くいつもの腕に戻して欲しいというのが本音だった。
「アンドリューはとっくに起きて、お前さんの整備の準備と部品の加工をやっとるよ」
「そうですか、それは申し訳ないですね……」
 部屋を出て歩きながら、カズンが言うのにアナスタシアは答えた。思えば彼は昔から朝が早く、アナスタシアは今まで一度も彼より先に起きた事が無い。
 やがてガレージの重い扉を開いて、2人は中へと入ってゆく。
「あ、おはよ〜」
 2人が入ってくるのに気付いたアンドリューが、部品を溶接する手を止めて言った。
「おはようございます」
「腕、用意できてるよ」
 アンドリューは言いながら、棚に置いてあったアナスタシアの左腕を持ってきて見せた。
「昨晩届いた疑似神経を組み込んだ上で、アナスタシアの生体脳に合わせて基礎チューニングしてある。これでたぶん問題ないはず」
「お前も気付いたら腕を上げたな」
「はは、カズじぃのお陰だよ」
 カズンがアンドリューの体を肘でつついて、にやけて見せた。アンドリューもそれに笑う。
「まったく、ガーディアンズに貸しとくのがもったいないわい。……じゃまあアンドリュー、後は頼む」
「うん、やっとくよ〜。もう部品発掘に出かけるの?」
「うむ。クズ鉄街は遠いからな」
 クズ鉄街は、ここホルテス・シティから南西に位置する研究都市ローゼノム・シティにある。
 フライヤーが使えればすぐなのだが、あいにくカズンはガーディアンズではない。リニアトレインを乗り継いで行くしかなく、半日はかかる道のりだった。
「朝一で出れば日没には間に合うからの」
「……あそこはそんなにいい物が手に入りますの? カズじぃはかなり昔から通っている気がしますが……」
「ああ、まだ使えるものでも研究が終われば廃棄する事が多いからな。あそこは宝の山じゃ」
 確かに、カズンはアナスタシアが生まれる前からクズ鉄街に通っては部品を手に入れてきていた。一体どこから手に入れているのか詳しくは分からないが、そのお陰でドッグが経済的に助かっているのは確実だった。
「分かりました。カズじぃ、お気をつけて」
「ああ。じゃあ後は頼んだぞ」
 カズンは言いながらガレージを出てゆく。向こうでレミィと話す声がしてしばらく経った後、ドアが閉まる音が聞こえた。
「さて、じゃあ腕を着けちゃおうか」
 アンドリューの声に頷いて、アナスタシアは整備台の上に腰をおろした。
「しかし、カスタマイズしてあるとはいえ、よくこの腕で戦闘ができるなあ」
 手際良く腕を取り付けながら、不思議そうにアンドリューが呟く。
「ええ、力強さよりも、精度とスピードを重視してカスタマイズしていますから」
「もともと、過酷な戦闘を想定して作られてなかったよね、エラシエルシリーズって」
「ですわ。……今回の件で、正直力不足を感じました」
 視線を落として、アナスタシアは呟くように言う。
「……うん、またいいパーツの情報が入ったら教えるよ。……はい、疑似神経繋いだよ。動かしてみて」
 アナスタシアはゆっくりと左手を動かしてみる。指を曲げてから伸ばしたり、掌を回してみたり。どうやら、問題なく動くようだ。
「ありがとうございます、問題ありませんわ」
「良かった。じゃあ、朝ご飯の後に細かい調整をしよう」
 微笑みながら礼を言うアナスタシアに、アンドリューは工具を手際良く片づけながら答えた。

「え、もうちょっとかかりそうなの?」
 立体ホログラムに投影されるルディに、オルハが言った。
「すまねェ。元老院のじじィどもがなかなか集まらなくてな。死に損ないばかりで墓から出て来やしねェ」
「まぁ、それは仕方ありませんね。大変な事をお願いして申し訳無いですが、引き続きお願いします」
 隣に立っていたアルファが、軽く頭を下げながら答える。
「あァ、なんとかするよ、またはっきりしたら連絡する。じゃあまた」
 回線を切ってから、アルファとオルハはゆっくりと息を吐いた。
「……やっぱ、3日間じゃ難しかったのかなぁ」
「でしょうね、オラキオは横の繋がりが強いぶん外部の者に対して警戒している部分もあるのでしょうし、長い間外部とは積極的に交流していないようですし……」
 両手を開いて首を傾け、アルファは苦笑して言う。
「じゃあ、わざわざ来てもらったのに悪いけど、オルハはこのまま待機を続けてくれる?」
「うん、しょうがないかあ」
 頭の後ろで腕を組んで、ため息をつきながらオルハは言った。
「……あ、そうだ。せっかくだから買い物でも行こ。……あ、もしもしイチコ? 今から買い物行こう。うん、クライズ・シティの3階とかどう? うん、じゃあまた後でね」
 いきなり端末で電話しだすオルハを見つめながら、アルファは苦い顔を見せる。
「……買い物は待機じゃありません」
「ま、細かい事は言いっこなし♪ じゃあ、行ってきまーす」
 スキップしながらミーティングルームを出るオルハに、アルファは頭を抱えて見送った。

「かぜよ、うなれ……ザン!」
 ネイが左手のウォンドを振り上げると、ブーマの集団の足元から小さな竜巻が起こり、鋭い風が彼らを切り裂く。
「ネイ、まだです。油断してはいけません」
「うん……がんばる」
 2人は今、任務の最中だった。"ブーマ"という直立歩行の猪のようなモンスターがニューデイズに現れたので、その討伐である。人里からは離れているため大きな被害は少なかったが、時折家畜や通行人が襲われるということで、ガーディアンズに討伐依頼が来ていたのだ。
 その内容であれば駆け出しのネイにはちょうどいいだろうとファビアは考え、2人は朝から任務にあたっていた。
「かぜよ、やいばになれ……ラ・ザン!」
 今度は鋭い風の刃が飛んだ。宙で大きく孤を描いてから一直線にブーマたちの皮膚を裂いてゆく。
 ブーマたちは完全にひるんだ。そこへネイはダッシュで駆け抜けながら、右手のネイクローをぶんと振り回す。ブーマたちは弱々しく一声鳴いてから、ばたばたと地面に倒れた。
「うん、いい感じですよ、ネイ」
「ほんと?」
「ええ。ザン系テクニックに関しては、ほぼ完璧に使いこなせていると思います。ネイクローについても、だいぶ使いこなせてきたのではないでしょうか」
「やったー!」
 にこにこと笑顔でファビアが言うのに、ネイも笑顔でそれに答える。
「ですが、まだまだ先は長いでしょう。油断してはいけませんよ?」PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe45 それから
「うん、わかった!」
 ネイは手を挙げて、無邪気に答える。その笑顔はとても明るく、成長を楽しんでいるようだった。
 彼女は若いせいか、習得がとても早い。テクニックはザンのバリエーションであるギ・ザンやラ・ザンもすぐに習得してしまったし、ネイクローを使った格闘戦も基礎はできている。
 このまま伸び続けたら、どこまで伸びるのか想像もつかなかった。
「……」
 だが、ファビアはまだ迷っていた。

 ……こんな幼い子を戦いに巻き込んでいいものだろうか。
 テクニックなんかを覚えるより、文字や料理でも覚えた方が本人のためになるのではないでしょうか……。

「ふぁびあ! つぎいこう、つぎ」
 にんまり笑って手をぶんぶん振るネイに、ファビアははっと我に返る。それから微笑み返して、歩き出した。
 ファビア自身も考えても仕方が無いのは分かっているのだが、ついついネイの事を考えてしまっていた。
「はいはい、早く片づけて早く帰りましょう」
「うん。ねえ、きょうのばんごはんは?」
「ん〜……そうですね、今日は久々にサバの味噌煮でも作りましょうか」
「やった! ふぁびあのみそに、だいすき!」
 笑顔のネイの頭を撫でて、ファビアは余計な事を考えるのをやめることにした。
 それよりも、今この任務を遂行する事を考えなくては、と。
「さて、それでは任務を早く完了できるよう、私も積極的に参加しましょう」
 そう言いながらファビアも長杖を取り出す。ぐっといつもの感触を握りなおして、それからゆっくりと息を吸って呼吸を整えた。
 突然、がさごそと草むらをかき分けて動く音がする。草むらから1匹のブーマが姿を表した。その後ろにさらに2匹。
 すぐに2人に気付いて両手を上げ、ぷぎーと鳴き声をあげてずんずんと向かってくる。
「まだかなりの数がいそうですね……"あれ"で一気に片づけましょう」
「あれで?」
「そうです。この間練習した通りにすれば大丈夫ですから」
 言ってファビアは長杖を頭上にかざした。ネイもまた、杖をぐんと突き出し、瞳を閉じて精神を集中する。
「氷よ、目標を打て……」
 ファビアの目前にフォトンが集まり出し、地面から突き出す氷塊へと変わってゆく。
「かぜよ、あらしになれ……」
 ネイの前に小さな風が生まれ、徐々にその勢いを大きくしてゆく。
「バータ!」
「ギ・ザン!」
 2人が同時に杖を振りかざすと、氷と竜巻が飛び出す。それはブーマに向かって一直線に飛んでゆくが、その途中で2つのフォトンが融合してゆく。やがて完全に融合し、氷を含んだ竜巻となる。
 荒れ狂うそれは、ブーマ3体を巻き込む。氷のつぶてが体を打ち、風が皮膚を切り裂いてゆく。
 ブーマたちは突然の事に逃げようとするが、風が体にまとわりつき俊敏な動きが殺されてしまっている。ただ鳴くしかできなかった。
 やがて竜巻がおさまると、ブーマたちはばたばたとその場に崩れてゆく。
「いいですよ、完璧なコンビネーションです。これが"ブリザード"ですよ」
「すごーい……」
 ネイがあっけに取られながらも、ぱちぱちと手を叩く。自分の放ったテクニックが、これほど強力な攻撃になるとは思ってもいなかったようだった。
「1+1は2ではありません。ガーディアン同志が力を合わせる事で、その力は5にも10にもなるんですよ」
 ファビアはネイの目線に合わせて腰を落とし、諭すような口調で穏やかに言った。その瞳は優しく、そして凛々しく実直な想いがこめられていた。
「ちからをあわせる……?」
「そうです。みんな1人じゃないんです。今のテクニックだって、世界にあふれるフォトンの力を借りているだけ。全てのものが深く関わりあって、世界は成り立っているんです」
「ふぅん……」
 ネイは首を傾げて困ったような表情を浮かべるのに、ファビアははっと気づく。つい熱く語ってしまったが、年端もいかないネイにはまだ難しすぎたのだろうと。
「……すいません、ちょっと難しすぎましたね。まあ、それはまた今度話しますよ。次に行きましょう」
「うん!」
 ファビアは立ち上がりながら、左手を差し出す。ネイも、自然に自分の右手を乗せる。
 ささやかな事なのだが、こんな日常的な当たり前が、ファビアにとっては非常に嬉しい事だった。

 ……そう、自分を必要としてくれる。
 私は、ネイのために生きなければいけない。
 彼女を守り続けなければいけない……。

 ファビアは思わず嬉しくなって、顔がほころぶのに気づく。
 だが、気を抜くわけにはいかない。ここは戦場なのだ。
「では、行きましょうか」
 言いながらファビアは、ネイが頷くのに微笑み返してから、その小さな手を引いて歩き出した。

「うあ……もう昼か……」
 ランディは寝ぼけ眼で手を伸ばし、目覚まし時計をひっ掴んで、絞り出すような声でつぶやいた。
 ここはコロニーにあるランディの自室だった。ガーディアンは緊急時に備えるため、ガーディアンズの指定する場所に住まなくてはならない。もちろんモトゥブなど3惑星にも住居を持つ事ができたが、家族や兄弟などのいないランディは特にこだわる理由もなく、入隊直後に与えられたコロニーの自室をそのまま使っていた。
 ランディは頭を振りながらベッドから降り、適当に服を脱ぎ捨てながらシャワールームへと向かう。
 コックを捻って暖かいお湯を全身に浴びていると、少し目が覚めてくる。何気なく拳を見つめて、指を広げたり閉じたりを繰り返した。

 ……あんなに脅威的な力……この間のは、一体何だったんだ?
 様々な戦場をくぐり抜けたりトレーニングを繰り返したりしているが、あんな力は今まで出せなかった。

 ……ジャッキー、お前のお陰なのか……?

 どちらにせよ――コナンドラムとの戦いは、今後激化してゆくのは目に見えている。
 これで、この力で。

 君のために戦える。

 だが、力に溺れてはいけない事など、彼は充分に分かっている。
 この間の任務では、感情に我を忘れてやり過ぎてしまった。お陰で山のような始末書を書く羽目になり、爆発の危機からコロニーを救ったという評価よりも、アルファやラジャに説教の材料を与えてしまっている、という結果に終わってしまっていた。
「……でも、そういうのは俺の仕事だからな……」
 ランディはゆっくりと呟いて大きく頷くと、湯を止めてシャワールームの扉を開けた。
 今後もコナンドラムとの戦いの中で、ためらいが危機を招くような時があるかもしれない。その時は俺の出番だ、とランディは考える。
「マスター! バスタオルです!」
 シャワールームから出ると、バスタオルを持った身長1メートル程度の少女が走ってくる。青い髪をポニーテールにまとめ、ニューデイズ風に前で合わせる上着に、ふっくらとしたズボンを履いていた。髪を止める大きなリボンや、背中にあしらわれた帯型のフォトンがそのシルエットをより女性らしくしている。
 彼女は、少女とはいっても人間ではなく"パートナーマシナリー"というサポートメカだ。
 パートナーマシナリーは、全てのガーディアンの専任のパートナーとして任務の補佐や情報処理を行うために支給される。人型なのは時と場合によっては戦闘を行う必要もあるからだった。
 しかし、自分のパートナーマシナリーを選びにガーディアンズ本部に出向いた時、ランディは閉口した。自分に近い男臭い男型がいいと思っていたのだが、ほとんどが女性型で男性型は少年タイプと老人タイプしかなかったのだ。
 当然これは製作者の趣味などではなく、過酷な任務を日々こなすガーディアンたちの精神的ストレスを払拭するのが目的で、その際に男性型はプロジェクトから外されてしまったという。
 それならばせめてと、自分と同じような戦闘スタイルのものをということで、斧を使った戦闘を得意とする彼女を選択したのであった。
「ああパティ、すまねえ」
 タオルを受け取って、そのままごしごしと顔を拭いた。
「マスター……あの、何度も言ってるんですが、風呂あがりに全裸で出てくるのやめてくれません? 目のやり場に困るんですけど」
「ん?」
 言われて見れば確かに、ランディは裸を隠すような仕草を一切取ってはいない。
「ああ、いつも言ってるだろ、別に減るもんじゃないしいいじゃねえか」
「あの、ワタクシ一応女性型なんですけど。というかぶっちゃけ、身長的に目の前に股間とかあり得ないんですけど」PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe45 それから
 ランディは少し驚いたような顔で、パティの顔を見つめ返す。それから自分のつま先まで視線を落としてから、
「……ふーむ。確かにそう言われてみれば、そうだな」
 と首をかしげながら呟いた。とはいえ真剣味はなく、そういうもんかねえ、というニュアンスである。
「でしょう。だから、もうちょっと気を使ってもいいと思うんですけど」
「とは言われてもなあ……」
 ランディは頭を掻きながら困ったように言う。そんな微妙な女心は、彼に分かるはずもなかった。
「裸でいられるとそんなにまずいもんか?」
「はい。目のやり場に困るんです。というかぶっちゃけ、興味ないんで、ワタクシの前では隠しててくれませんか」
「……そうか、そういうもんなのか」
 ランディはボキャブラリを超越した言葉を復唱するかのように呟いて、とりあえず腰にバスタオルを巻いてその体を隠す。
「これでいいか?」
「はい、マスター」
「OK。じゃあ朝食を頼む」
 こくりと素直に頷くパティにランディは微笑んで答えて、そのままビジフォンへと向かう。頭をバスタオルでがしがしと拭きながら、その画面を指で叩いた。"日刊ガーディアンズ"はさらりとスルーして、他に重要な情報が来ていない事を確認する。
 そこへ突如、ビジフォンが鳴る。
 アナスタシアからの通話を受信したのだった。突然の事に驚いてランディは思わず仰け反った。
「おう、俺だ」
「こんにちは、ランディ。……ええと……とりあえず、服を着てもらえますか?」
 ビジフォンでの通話は、基本的に映像も同時に送受信する。全裸のままバスタオルで頭を拭くランディに、アナスタシアは冷静に言った。
「気にするな、別に減るもんじゃない」
 ランディは「デジャヴュ?」などと思いながら、困惑している(……と思われる)アナスタシアの声に答える。それからパティとの先ほどのやり取りを思い出して、続ける。
「……っと、すまねえ。目のやり場に困るんだったな」
「その通りです」
  それを聞きながら、ランディは腰にバスタオルを適当に巻きつけた。
「……ところで今、話をしても?」
「もちろん」
 ランディは答えながら葉巻をひっ掴んで火をつける。食事の準備をしていたパティがそれに気づいて「換気扇の前で!」と叫んでいたが、そんなものは気にもしない。
「腕の修理が遅くなってしまい、すいません。ですが現在、最終調整中なのでもうすぐ終わりそうなのですわ。良ければ、少しお待たせしてしまうかもしれませんが今からこちらに来て頂いて、そのままゴミ捨て場に向かいませんか?」
 物事の起承転結をきっちりまとめた文章で、アナスタシアが一息で言い切る。さすがだねぇ、とランディは妙に感心した。
「了解だ。パルムのカズン・ドッグだったな? すぐ行く」
「了解です。それではお待ちしております」
 通話を切ってから、ランディは大きく息をついた。

 ……あの場所に行かなくてはならないのか。
 全てが始まった、あの場所に。

 違和感を感じて右手を眼前に持ってくる。わずかに震えているのに気づいて、思わず左手をかぶせてぐっと握った。
「……ちッ」
「マスター……良ければ私もお供いたしますけれど?」
 パティが心配そうに覗きこんで、声をかける。
「大丈夫だ。問題無い」
「いえ……ですけど」
「……大丈夫だ」
 静かに言うランディに、パティは開きかけた口を閉じた。彼の顔が、あまりに真剣だったからだ。
「自分で克服しなきゃいけねぇんだ、こればかりは」
「いえ……ぶっちゃけ、ワタクシはマスターが気になっているという方とお会いしたいだけで」
「そっちかよ!」
 パティはこほん、と軽く咳払いをしてから、悪びれた様子もなく続ける。
「お言葉ですが、どうせマスターは不器用ですから何も発展しない可能性の方が高いと思うのです。だから、ここはワタクシの出番でしょう?」
「うっ……」
 ランディは言葉に詰まる。

 ……よくもまあ、人の痛い所へずかずかと土足であがりこんでくるものだ……。

 だが、それも正論であり、ランディは言葉に詰まる。
「いや、別にいいのですよ、マスターが彼女にとって最高の言葉や贈り物を選べるくらい、相手の事を知り尽くしているとおっしゃられるのであれば。ええ、ワタクシの出番などありませんとも」
「……パティ」
 ゆらりと、ランディが真面目な顔で振り向くのに、パティは一瞬固まる。

 ……いつもの調子でべらべらと言いすぎてしまったかな?

「頼む、ついて来てくれ」
「……体の底から力が抜けていきます」
 パティはあまりの脱力感にめまいを覚えて、ふらついた。

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注意事項

※この物語は株式会社セガが提供するオンラインゲーム「ファンタシースターユニバース」を題材としたフィクション(二次創作物)です。世界観、固有名詞、ゲーム画面を使用した画像など、ゲーム内容の著作権は株式会社セガにあります。
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※登場する団体名・地名・人物などは、実在する名称などとは一切関係ありません。
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