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PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる時の半世紀の終りに〜 universe43 全ての元凶

 ぱちぱちぱち、と背後から拍手がした。
「お見事。さすがだね、アナスタシア」
 入り口から入ってくるキャスト兵たちの中から、知った声と共に姿を表す者がいた。
「……バーバラ」
 アナスタシアは振り向いて、眉を寄せて睨みつけた。
 全ての元凶。憎むべき女。
「きゃっ、みなさんお揃いで!」
 その後ろから、プルミエールが姿を表す。明らかに場違いな明るい声を発しながらぴょんと跳ねて、
「おねえさま〜♪」
 と手を振ってみせた。
「……これも"興味があったから試した"という事で解釈してよろしいでしょうか?」
「ははっ、言うもんだね」
 バーバラは見下すような目線で言ってから、"やれやれ教えてやらなければ分からないか"と言わんばかりの口調で続けた。
「残念ながら、今回はピクニックのつもりだったんだがね。どこかの生意気な小娘が向かってると知って、これはいい機会だと思ってね」
 言いながら、壊れて煙をあげるサイレンに目線を向け、顎で促す。
「まあ、そいつが壊されたのは計算外だったがね。せっかくニューマンの法撃の素養を与えて、シャドゥーグを扱えるようにしてやったんだが……まあ、そいつは新型のテストだし、その程度のは代わりなんていくらでもいるがね」
「……相変わらずですわね。創造主にでもなったおつもり?」
「創造主……いいね、今度から"博士"ではなく、"創造主"と名乗ってみるかね」
 にやにやと笑ってバーバラが言う。おどけているつもりなのかもしれないが、それは不快感を煽るだけのものでしかない。
「……」
 アナスタシアは無言のまま、彼女の顔を睨みつけていた。目をそらせばいいのに、そらせない。
「おい……お前ら、一体何の目的でここに入った? ダークファルスの情報を集めてどうする気だ?」
 剣を杖代わりに地面につき立て、片膝をついたままのルディが顔をしかめて言った。
「さぁ。答える義務はないだろ?」
「……あァ、そいつぁその通りだ。じゃあ、力づくにでも吐かせるまでだ」
「ルディ」
 右手を横に伸ばして、アナスタシアはルディを制する。顔はバーバラの方を向いたままで、続けた。
「今の私たちでは勝ち目がありません。ここは一旦引きましょう」
「だが……ッ!」
「こちらは5人ですが、向こうにはまだ倍以上の兵が残っています。向こうが交戦する気が無いというのなら、それに甘んじましょう」
「……ッ!」
 ルディが明らかに怒りの表情を見せて、拳で地面を叩く。
 それから、ルディは気づく。
 アナスタシアの右腕がわずかに震えている事に。彼女もまた自分の感情を抑えている事に、彼は何も言えなくなってしまった。
「でもバーバラ様、早いうちにガーディアンズに伝えておいた方が面白くなるんじゃないですか?」
「……ああ、確かにそうなんだが、面倒くさくてね。……いや確かに、その方が絶対に面白くはなるんだが……」
 ぶつぶつと独りごちてから、何かに納得したような顔でバーバラは視線を上げる。
「じゃあ、教えてやろうかね。まず、このグラールは特殊な太陽系だ。太陽を中心に3つの星が存在し、それ自体が特殊な意味を持つ。そう、3つの星が、"封印"を司っているのさ」PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe43 全ての元凶
 まるで教壇に立っているかのように、バーバラは得意そうに語り出す。
「ところが、一定周期でその封印が弱まる時がある。それがもうすぐ……と言えば、分かるかね」
「"合"の時……」
 ファビアが呟くように答えた。
「正解だ。"合"とは天文学用語で、惑星がある観測点から見て2つの惑星が同じ位置、つまり一直線に並んでいる状態のことを指す。だが、3つの惑星を持つグラールでは"合"は同時に違う意味を持つ」
「……3惑星全てが、正三角形に並ぶ時ですね」
「話が早いね、いいことだ。とにかくその時だけは全ての封印が弱まるのさ。それが1000年ぶりに起こる。封印が弱まるという事は……」
 一同がはっとなって顔を上げる。
「まさか……ダークファルスが……!?」
「ご名答。我々はすでに封印された"欲望の箱"とやらを手中に収めている。封印が完全に弱まったその時、ダークファルスが復活する……面白い事になりそうだろう?」
 にやにやと笑いながら言うバーバラに、アナスタシアは向き直る。静かに息を吐いてから、口を開いた。
「冗談は顔と性格だけにして頂きたいものですわ。そんな事をして、なんになるんです?」
「決まってるじゃないか……ふははっ……ふは、はふぅ、はぁぁああ」
 バーバラの笑い声のリズムが狂う。両手で鼻を左右から押し潰してからゆっくりと大きく息を吐き出した。
「それはもちろん……全てを無に返すためだよ。全て滅んでしまえばいい。そこに私が君臨する。……いいかい、これはゲームなのさ」
 両手を広げて、説明口調でバーバラは続ける。そのにやにやした笑顔が不快感を煽る。
「ゲーム……?」
 アナスタシアが不思議そうに呟くのに、バーバラは醜くニヤリと笑った。
「誰が生き残るか、のね」
「……狂っていますわ」
 アナスタシアは心底軽蔑した冷たい視線で、吐き捨てるように言い放った。
 ……そう、正気の沙汰とは思えない。
「褒め言葉として受け取っておくよ。まあ、心配しなくてもいい。"合"まではまだ時間があるし、あんたたちの手札も残しておいてある。フェアでないとゲームはつまらないからね」
 アナスタシアは視線を落としてゆっくりと息を吐いた。
 狂っている。それ以外の言葉は思いつかなかった。
「まあ、せいぜい頑張るがいいさ。では、また会おう」
「ちょっと待ってください」
 ファビアがわずかに歩み出て、口を開いた。
「なんだい。ロスタイムはとっくに終わってるんだが?」
「……そうやって人の脳を改造して、何が面白いのですか」
「くくっ、命をこの手に掴むのは、さぞかし楽しいよ。そして、素晴らしいものが出来た時には、最高の気分だ」
「ねぇバーバラ様、それって私の事だよね、ねっ」
 その言葉を聞いて反応したらしい、プルミエールが手を挙げて言う。
「ああ、プルミエールは最高傑作さ。ビーストの身体能力と、キャストの精密さ……そして隠し味に魔法のスパイス」
「ささ、これで分かったでしょ、ガリガリ君。ケガする前におうちに帰りなさ〜い♪」
 プルミエールがあかんべー、と舌を出して言い放った。
「ガリガリ……!」
 ファビアが驚きを隠せない顔で絶句する。それに対して誰も何も言えなかった。
「……次に会う時は、あなたの最期ですわね」
 アナスタシアがゆっくりと息を吸ってから、吐き出すように言った。
「それはどうかな。お前の最期かもしれないし、もう二度と会えないかもしれない。……もったいないとは思うがね」
 ふと、バーバラが不思議な表情を見せた。悲しんでいるのとは少し違う、どこか暗い表情だった。
 だが、アナスタシアにはそんなものどうでも良かった。
「……聞きたい事はまだあります。8日前にお会いした時、何故わたくしの名前を知っていたのです?」
「あんたほどの腕前のガーディアンぐらい、知っててもおかしな話じゃあるまい? 何を期待している?」
 確かにそれは否定できない。裏社会ではガーディアンズの情報が高値で取引されている事ぐらい、ガーディアンなら誰でも知っている。
「明らかにあの時、わたくしを狙っていたような口調でしたわね。前回といい今回といい、わたくしの行動を把握した上で行動しているようにも見えます。無作為にわたくしを選んだとは思えませんが?」
「……お前に種明かしを教えるつもりは無い。せいぜい考えるがいいさ」
「自分の都合の悪い時は逃げるのですか? それは卑怯だと思いますが」
 ここで、バーバラが黙った。暗い表情で目を細め、アナスタシアを睨みつける。
「……小生意気な。やっぱり今、ここでお前にとどめを刺してしまおうかね」
 あふれ出る憎悪。その視線をアナスタシアは睨み返す。
 ……不思議と、恐怖は無い。誇りを持って逝ける。二度とアンヌの顔を見れないのは残念だけども。
「待ってバーバラ様!」
 それを制したのは、以外にもプルミエールだった。
「今おねえさまを@#!スクラップにしたら、ゲームが面白くなくなっちゃう! 私の楽しみもなくなっちゃう!」
「……」
 ちっ、と舌打ちしてから、バーバラは踵を返した。それから、振り向き様に、吐き捨てるように言った。
「あんまり調子に乗るんじゃないよ、アナスタシア。"英雄"気取りは鼻につく」
「おねえさま、またね〜♪」
「……」
 立ち去るバーバラとキャストたちを見つめて、5人は立ち尽くしていた。
「畜生……」
 ルディが悔しそうに呟いた。
「……すごいオーラだったっス。触れたら斬られるかと思ったっスね」
「そういうの、好きそうじゃがのう」
 ウィンドが服の汚れをはたきながら、いつもの調子で軽く言うのに、メァルが不思議そうに答えた。
「そんな事ないっスよ……ドキドキ」
「喜んでおるのか?」
 そんな絶妙なやりとりに、アナスタシアが吹き出してから続けた。先ほどまでものすごい勢いで睨みつけていたとは思えないぐらいに、明るく楽しそうな声で。
「うふふ……皆さん、大きな被害も無かったですし、結果OKという事で、よろしいかしら?」
「まぁ、しょうがねェか」
 ルディが立ち上がりながら、ゆっくりと息を吐いて答えた。
「ルディ、ガーディアンズコロニーのメディカルセンターに寄って行って。その怪我のまま返すわけにはいきません」
「ああ? いいよ、こんなもん唾つけときゃ治る」
「だめです」
 アナスタシアが右手を腰に当てて、真面目な顔つきで続ける。
「傷が化膿して切り落とさなければなくなったらどうするのです? 私たちキャストのように、簡単に治せるものではないんですよ?」
 その光景に、ぷっとウィンドが吹き出した。
「アナスタシアさん、まるでお母さんっスね」
「あら、それは心外ですわ。わたくしはまだ製造されて15年です。皆さんよりも若いはずですが?」
「15年? わらわには、そのようには感じられないのじゃが」
 メァルがいぶかしげな視線で腕を組んで、覗きこむようにして言う。確かに、アナスタシアの言動やその行動は15歳のものとは思えない。
「キャストと人間では年齢の考え方が元々違うのですわ。そもそもわたくしは、産みの親であるカズじぃの基礎データを元に、ある程度の知識を持った状態で産まれています」
「なるほど、最初からある程度の知識や経験を持った状態で産まれて来ておるという事かの?」
「そういう事です。個人差はありますけどね……さて、とりあえず報告にコロニーに戻りましょう。ルディ、ついでにミーティングに顔を出して。今後の事を話したいですし」
「了解だ」
 ルディが頷いて答える。
「向こうのチームも無事に戻って来ていればいいのですけど……」PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe43 全ての元凶
 アナスタシアが思った事を素直に呟いた。
「そうっスね……あれ?」
 答えてから、ふとウィンドが辺りを見渡した。不自然な事に気付いたのである。
 その視線に気付いて、全員が振り向いた。見ると、アンドリューが壁に体重を預け、よりかかるようにしている。
「ああ……彼は"キャスト・ナルコプレシー病"で、時々不意に省電力モードに入ります。ウィンド、彼を起こしてあげてくださいます?」
「どうりで静かだと思っていたら……了解っス」
 アナスタシアは指示をしてから、地面に落ちている自分の左腕を手に取った。懐かしい物を見るように、なんとなく目を細めてそれを見つめる。
 ……エラシエルシリーズのアームは、純粋に戦闘用として作られているものではない事は充分に承知していたはずだ。でも、どこかで自分の力を過信していたのかもしれない。
 今後、コナンドラムと対峙する上で、自身の強化は必須項目だ……。
「……考える事は山積みですわね」
 軽く息を吐きながら静かに呟いて、アナスタシアは顔を上げた。

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