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PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる時の半世紀の終りに〜 universe33 打ち砕かれる、安息

「……んあ?」
 眠そうにまぶたをこするランディに、ベッドの脇の椅子に座ったままファビアは続けた。ネイもその隣に座り、同じようににこにこと微笑んでいる。
「これ、滋養強壮にすごく効くんです、両親も愛飲していました。ランディも早く元気になってくださいね」
「……えっと、なに?」
「私の地元の名産で、リポビタウラという植物から取ったエキスで、これが滋養強壮によく効くんです」
「……じゃなくてさ」
 ランディは半分閉じたまぶたで、イラつきながら続けた。
「なんで早朝6時半に面会に来るんだ、お前はっ!」
 早朝のメディカルセンターに、ランディの声がこだました。

 と、いうわけで。
 三人はコロニーの居住区にあるカフェで、早めの朝食を取る事にした。時計を見るとまだ7時で、ミーティングまであと3時間はある。
「すいません、まさかまだ眠っていたとは思わなかったものですから……」
「……いや、それはもういい」
「はやねはやおき、がーでぃあんのきほん」
 ファビアの隣でストローをくわえてジュースをすすりながら、ネイがすました顔で言う。
「立派な教育方針ですこと」
 それに苦笑しながら、ランディは呟いた。
「ところで、良かったのですか?」
「? ああ、どうせ今日退院だったし、何時に出ても同じだろ」
「あ、いえ、そうじゃなくて。オルハを起こさなくて良かったのですか?」
 ランディが荷物をまとめている最中もずっと、オルハは布団を蹴り上げてお腹を出したまま、高イビキで眠っていた。しかも枕に足を乗せ、上下逆で寝ているという有様だった。
「ああ……あいつも今日退院だったな。大丈夫だ、あいつはやればできる子だ」
 よく分からない理屈を言いながら、ランディは運ばれてきたトーストにがっついた。
「……そいやお嬢ちゃん、もうテクニックが使えるようになったんだよな」
「そうです。高い素質を持っています」
「俺と同じビーストとは思えねぇ。すげぇな」
 ネイの方をまじまじと見て、ランディは真顔で言う。毛嫌いしているわけではないが、テクニックを使おうとも思わないランディから見るとその話はまるで別世界のようだった。
「ええ、本当に驚きです。この子を見ていると、精進しなくては、という気持ちになりますね」
 コーヒーを一口すすりながら、ファビアはしみじみと言った。
「まったくだ……俺も頑張らなくちゃな」
「謙遜を。コナンドラムの施設での活躍、聞きましたよ」
「いや、まぁ結果は結果なんだが……なぁ」
  ランディは頭を掻いて、ゆっくりと息を吐く。自分の中で納得のいかない事を評価されても、なんとも答え難い。
「……ところでさ、あんた"恐怖"ってどういう時に感じる?」
 急に前屈みになって、ファビアの顔を覗きこみながら、ランディは聞いた。
「恐怖……ですか?」
 急な問いにファビアはきょとんとした顔で、少し考えてから答える。
「そうですね……大切なものが無くなってしまう時……でしょうか。あとは、目標に対して、どれだけ努力しても届かないと感じた時も恐怖を覚えます」
「……なるほど」
 それを聞いて、頷きながらしみじみと考え込むランディにファビアが続ける。
「今、何か悩んでいるんですね? だからそんな質問を」
 はっとなってランディは顔を上げる。
「私は、死んだ両親の気持ちを受け継いでいます。その想いがある以上、負けるわけにはいきません。……ランディ、あなたは何を受け継いでいますか? あなたの胸の中には、何がありますか?」
「……!」
 ランディは驚いたような顔で、まっすぐにファビアを見返した。思わず立ち上がって、テーブルに両手をつく。
「俺は、怖いんだ。周りの人間や、仲間を失う事が。"水晶の夜"で、たくさんの仲間が死んだ……あんな思いはもう、したくない。だから俺は自分を鍛え上げたし、ガーディアンになった……だが、今回の任務で俺は死にかけた。仲間を守りきる事はできたが、これじゃあ足りないんだ。もっと強くならなきゃいけねぇんだ」
 ランディは一気にまくしたててから、我に返ったようにはっとなって、ゆっくりと椅子に腰を降ろした。
「……すまねぇ、熱くなっちまった。あんたに話してもしょうがねぇのにな」
「いえ、まったくもって同感です。私も今、実力不足を感じています。今後の激しい戦いに備えて、いろいろ準備が必要ですね」
「だな」
「あと……素直に心のうちを話してくれてありがとう、ランディ。これからも仲間として、よろしくお願いします」
 言ってファビアは右手を差し出す。
「……ああ、頼むぜ。期待してる」
 その手をゆっくりと、そしてしっかりとランディは握りしめる。それからふと、まるで何かに気づいたかのように、ファビアが口を開き始めた。
「……ところで、ランディ。私は、あなたともっと良い関係になれると思います。親近感を抱きました」
「? どういう意味だ?」
「……私の両親が命を落としたのは、"水晶の夜"が原因だからです」
「!」
 その声に、ランディは目を見開いた。まさか、あの暴動に関わっていた人がこんな近くにいるとは思ってもみなかった。
「私の両親もガーディアンで、多忙な日々を過ごしていました。その日はたまの余暇で、二人でモトゥブに買い物に出かけていたんです。私の誕生日が近かったので、そのプレゼントを買いに、私に内緒で、ね」
「……」
 ランディはうつむいたまま何も言わずに、それを聞いていた。まるで、淡々と話すファビアの声だけが今ここで発生している全ての音であるかのように。
「太陽系警察から連絡が来て、驚きましたよ。まさかそんな事に巻き込まれてしまっているとは思いもしませんでしたから。いろいろ話を聞いた所、両親はけが人を出さないよう、ビーストを守っていたようです」
「……それで同盟軍の武力鎮圧に?」
 ファビアは答えず、瞳を閉じてゆっくりと頷いた。
 沈黙が続く。この世界には今、この二人しか存在していないかのような、静けさ。
「……立派じゃねぇか」
 ランディが静かに沈黙を破って言うのに、ファビアははっとなって顔を上げる。
「立派な両親だ。誇りを持っていい」
「……!」
 そっと右手を伸ばして、ランディはファビアの胸を手の甲でどん、と叩く。
「生きてんだろ、ここに?」
「は……はい……!」
「改めて、これからも頼むぜ」
 ランディが差し出す右手を、ファビアは再度しっかりと握り締めた。

「あら、良いお天気ですわ」
 アナスタシアは欠伸をしながら体を起こして、窓の外に広がる日の出を眺めた。いつもはコロニーの自室にいるので、日の出を拝める事はなかなかなかった。
 ゆっくりとベッドから降りて、ボディパーツを手に取る。就寝の時は人工皮膚のみの姿となるため、パーツ類は全て外して床に置いていた。
 パーツを全身に身に着け、ちょうど最後のホバーパーツを取り付けたあたりで、ドアを叩く音が聞こえた。
「アナスタシア、起きとるか?」
「準備万端ですわ。いま開けます」
 言ってドアノブの上にあるキーでパスワードを入力してゆく。ロックが外れてから、ドアを開けた。その向こうには、カズンがいた。
「おはようございます」
 ここは、パルムのカズン・ドッグ。整備のためにパルムに降りた彼女は、そのままここに泊まっていたのである。
「ああ、おは……」
「この香りはもしかしてッ!?」
 カズンの挨拶を遮って、アナスタシアは叫びながらドアから顔を出し、左右を交互に覗く。廊下に香る、僅かなバニラビーンズの匂いにアナスタシアは反応していた。
「……当たりだ、レミィがシュク・リームを焼いとる」
 カズンが言い終わるより早く、すでにアナスタシアは飛び出してゆく。
「……ったく、落ち着きのない」
 その後ろ姿を見ながら頭を掻いて、やれやれとカズンは呟いた。

 ダイニングには柔らかな日差しが注ぎこまれ始めていた。レースのカーテンのすき間から差し込む光は、まだ遠い春の温かさを感じさせる。PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe33 打ち砕かれる、安息
「アナスタシア、出勤前でしょう? 食べ過ぎない程度にね」
 キッチンからレミィの声が聞こえた。シュク・リームをパクつきながら、アナスタシアは曖昧に「はぁい」と返事をする。
「……ワシの午後の休憩の分は残りそうかね」
 新聞を片手に、カズンがダイニングへ入ってくる。そのままテーブルの横にあるベビーベッドを覗き込んで、アンヌが寝息を立てて眠っているのを微笑みながら見てから、手近な椅子に腰を降ろした。
「しかしまぁ、朝から甘いモン、しかも固形物をよく食えるもんだ」
 カズンはうんざりした顔でアナスタシアを見つめた。
 キャストには食事は栄養補給としての意味しか持たないと考えている者が多く、かくいうカズンも食事のほとんどは栄養剤のみで過ごす。そんな彼から見て、アナスタシアは特殊に思えた。
「まぁまぁ、そう言わず。はい、あなたの分はこちら」
 エプロンで手を拭きながら、レミィはダイニングにやってくる。そのままカズンの前に、いくつかのタブレットとコップに注がれた黄色い液体を置いた。
 彼女はキャストだが顔は生体パーツで、長い髪を後ろで1本にまとめていた。顔の横にアンテナではなく耳があれば、ヒューマンに見えたかもしれない。年の頃は40代後半だろうが、とても若々しく見える。柔和な微笑みが優しさを感じさせる、穏やかな女性だった。
「ありがとうよ。今日は遅くなりそうだからタブレットを多めに……」
「出しておきましたよ」
 カズンは言われてはじめて、目を細めてじっくりとテーブルの上を見る。それからレミィの顔を見てからもう一度視線をテーブルに戻して、頭を掻いた。
「ああ、すまんすまん、ありがとうよ」
「あらやだ、あなたったら老眼じゃないの?」
「かもな、うははは」
「……何を朝からイチャついてるんですか」
 その二人のやりとりを、手を止めて見ていたアナスタシアが太い声で呟く。
 その声にはっとなって、二人は振り向いた。お互いの顔を見つめてから、ぱっと目をそらす。
(……イチャついてる自覚があるんですね、この二人)
 この光景を、アナスタシアは子供の頃からずっと見せつけられている。肉体的な繋がりに依存しないキャストだからか、二人のやりとりはいつ見ても初々しく、それは何年たっても変わらない。
「ま、それよりだ。今の任務、結構大変みたいじゃねぇか」
 バツが悪そうに頬を指で掻きながら、カズンが話題をすり変えた。
「ええ。たかがローグス退治かと思っていましたが……すでに重傷者が三名も出ていまして」
「あらまぁ、怖いわぁ」
 レミィが驚いた顔で、一般人としてもっともな声をあげる。
「本部は人員の増加を決定しましたわ。それで本日のミーティングですの」
「なるほどなぁ、やっかいな事は続けて起こるもンだな。なんだっけ、記念式典で落ちてきたとかいう……」
「SEEDですか? あの事件もいろいろややこしい事になっていますが……」
 アナスタシアは言いにくそうに言葉を締めくくった。SEEDが落下してきてから大規模な殲滅作戦や浄化作戦が何度も展開されていたが、収まる気配は無かったからだ。
「あれって、人間には感染しないのかしら?」
 SEEDは地面に墜落すると、周りの動植物を感染させ、その性質を凶暴にする。レミィはそれが人間に影響しないかを心配していた。
「その件は大丈夫ですわ。SEEDウィルスは人間には感染しません」
「そうなの。じゃあ安心ね」
「いや、安心ではないじゃろ。凶暴化した原生生物があちこちで暴れまわっているようじゃからのう……」
 少し沈んだ空気で、二人は腕を組んでうんと唸る。
 ……危ない。
 アナスタシアはぽろりと機密情報を漏らしかけたことに気付いていた。
 「SEED」は人間に感染する事はないが、「SEEDウイルス」という改良された種が、人間だけでなく機械にも感染する事を、ガーディアンズ本部から報告を受けている……。
 幸い二人は、そんな些細な単語の言い間違いには気付いてはいない様子で、ニュースで見たSEEDの恐ろしさを延々と語り続けていた。
「アナスタシアも、危険な任務は断るようにしてね?」
「そうしたいんですが、何かと忙しくてそういうわけにもいかないのですわ」
 心配するレミィの声にアナスタシアはため息と共に答えた。SEED事件以降、ガーディアンズは本当に忙しい。
「ああそうそう、ところでアナスタシア。恋人はおらんのか?」
 カズンのいきなりの問いに、アナスタシアは思わず紅茶を吹き出した。
「な、何をいきなり言うんですかっ」
「すまんすまん。ほら、お前さんにも頼る相手がいれば、少しはおとなしくなるんじゃないかと思ってな」
 カズンが苦笑いをしながら言う。レミィが流し台から台拭きを持って来て、テーブルを拭き始めた。
「いませんわ。特に必要さも感じておりませんし」
「アナスタシアはしっかりしすぎているから、男の人が寄り付きにくいのよね」
 レミィがぽんやりと、しかしグサリと刺さる事を言う。
「心配じゃの。早くアナスタシアにもこの幸せを分かって欲しいのう」
 言いながらカズンはアンヌの頭を撫で、レミィの方を振り返る。レミィもそれに微笑み返し、笑顔のままで頷いていた。
「とにかく、もう9時をまわりましたし、わたくしはそろそろ出ますわ……」
 このバカップルに付き合っていたら、いつまでたっても話が終わらない。アナスタシアは少し脱力感を感じながら、カップの紅茶を飲み干して、席を立った。
「あらあら。じゃあこれ、持って行って」
 レミィが手際よく、紙箱にシュク・リームを詰めてキッチンから戻ってくる。
「ガーディアンズの皆さんに、よろしくね」
「ありがとうございます。では、行ってきますわ」
 アナスタシアは玄関先まで歩きながら、ナノトランサーに紙箱を入れる。
「いってらっしゃい。また来るんじゃぞ」
「待って、アナスタシア」
 レミィがアナスタシアを呼び止めた。そして腰を落としてアナスタシアの目線に高さを合わせ、ゆっくりと優しく、そして強く、言った。
「種族や性別に関係無く、どんな方でも仲間なのを忘れないでね」
「ええ。……なんだか子供扱いされている気分ですわ」
 アナスタシアがちょっとすねたように言うと、レミィはにっこりと微笑む。
「あなたはいくつになっても、私たちの子供ですよ。いってらっしゃい」
 二人に見送られながら手を振って、アナスタシアはスペースポートに向けて歩き出す。
 その姿が小さくなるまで見送ってから、カズンが不意に呟いた。
「アナスタシアも良い子に育ってくれたな。最初はどうなる事かと思ったが」
「そうね……あの子はずっと、あのままでいて欲しいわね……」
 レミィが微笑みながら、しかしどこか寂しい目で答えた。

「うム、これで全員集まったか?」
 ミーティングルーム前方の巨大ディスプレイの前に立ちながら、ラジャは全員の顔ぶれを見渡した。その隣にはアルファが立っており、手に持ったバインダーをめくって何かを確認している。
「見た事の無い顔もいるな」
 最前列に座っていたランディが、隣のファビアの肩を叩いて声をかける。
「そうですね。いよいよガーディアンズも本格的に動き出しましたね」
「なかなか大がかりな事になってきましたわね」
 その後ろに座っていたアナスタシアが、ファビアの言葉に同意する。最初はたかだかローグス退治だったのが、わずか一週間で大きな話になっているのを、今更ながら実感したような口調だった。ネイもそれを聞いて、よく分かっているのかいないのか大きく頷く。
「そういえばオルハ、体だいじょうぶなの?」
「うん。ボク不死身だから」
 隣に座るイチコの問いに、オルハはガッツポーズで答える。
「……ほんとに元気だねぇ」
 それを後ろで聞いていたヴァルキリーが、あきれた顔で毒づいた。
「あら、アンドリュー? あなたもこの任務に?」
 ドアが開いてアンドリューが入ってくるのに、アナスタシアは明るい顔で言う。
「そうだよ。俺も任務に参加する事になったんだ。よろしく」
 アンドリューはアナスタシアの隣に腰を降ろしながら続ける。
「詳しくは聞いてないんだけど、なんか大変なんだって?」
「ええ。すでに数名の重傷者が出ており、予想外に話が大きくなっています。……とにかく、よろしくお願いしますわ」
 微笑みながら右手を差し出すアナスタシアに、アンドリューもまた右手を差し出して答えた。
「アナスタシア、私も今回から参加させてもらう事になったよ」
 聞きなれた声に振り向くと、テイルが軽く右腕を上げて入り口に立っていた。
「あら、テイルまで」
「お、旦那じゃねぇか」
 それに気付いたランディも、立ちあがって近くに向かう。差し出す右手を、テイルが握り返した。
「今回もよろしくお願いしますわ」
「ああ、私の方こそ」
「フォトンスキーはもう御免だがな」
 ランディの声に三人は笑う。見慣れた顔という心強さが、余裕を持たせてくれた。
「よし、じゃあさっさとミーティングを始めるぞい。ダラダラしてるのはダラしないからのう!」
「さて、では始めます」
 駄洒落を華麗にスルーして、アルファが口を開いた。
「じゃ、ワシから状況を説明するぞい。まず、ガーディアンズとコナンドラムの関係じゃが、非常に険悪じゃ」
 その声に一同はざわめき、顔を見合わせたり疑問を口にしたりする。
「ガーディアンズ側から接触を試みてはいるが、向こうは施設にガーディアンが潜入した事を理由にそれを突っぱねておる。もちろんこちらも、研究成果をしかるべき公共機関に譲渡するか、政府が関与できる管理体制ができるまでは同じテーブルにつくつもりはない。そんなわけで非常に良くない状態になっておる」
 ラジャは腕を組んだまま、強い口調で言った。
「最近のコナンドラムの動きはどうなっていますか?」
 アナスタシアが間伐入れずに聞く。
「不振な動きが続いています。コロニー近辺でも何度か調査艇が発見されており、各地のレリクスにも調査団を送っているようです」
 アルファが手に持ったバインダーを見ながら答える。
「あのバーバラという女は、一体何を考えているのでしょう?」
「まともな人とは思えませんでしたからね……見当もつきません」
 アナスタシアの声にファビアがかぶりを振って答えた。
「そういえばさ、むかーしバーバラが作ったキャストはどうなったんだろうね」
 ふと思い出したように、オルハが素朴な疑問を口にした。
「現在のキャスト隊のベースとなったか、はたまた違う目的で使われているのか」
「それについては当時いろいろ噂があったようです。太陽系警察に追われた際に証拠隠滅のために放棄されたとか、実験として一般社会に潜り込んでいるとか……数えきれないほど様々な憶測が飛び交っています」
 ファビアの答えを補足するように、アルファが答えた。
「何せ16年も前の事だもんね。きっと誰も知らないんだろうな」
 オルハが後頭部で腕を組んで、息を吐きながら背もたれによりかかった。
「ま、とにかく大きな話になってきたわけじゃ。そういう事もあり、本日より新たに三名、増員を行う。これ、三人は前へ」PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe33 打ち砕かれる、安息
 ラジャの手招きに答え、ヒューマン男性とニューマン女性、それにアンドリューが席を立つ。
「うム、ウィンドから挨拶を頼むわい」
 ヒューマン男性が頷いた。彼は黒い髪を短めにまとめ、眼鏡をかけている。身長は160センチほどと小柄で、体躯も細い。黒に赤のラインをあしらった上下に身を包んでいるが、体のラインの出る服装のためなおさら細さを強調している。眉尻の下がった表情に、少し弱気な印象を受ける青年だった。
「俺、参上! 初めまして、ウィンドっス! 双手剣が得意で、ばりばり前線に立つっス。よろしくお願いします!」
 彼は言ってぺこりと頭を下げる。その屈託の無い笑顔や滑舌の良い発音が、世間ずれしていない若さを感じさせていた。
「次、メァル」
 ニューマン女性が一歩前に出る。彼女は長い髪で頭に冠を被り、白を基調としたニューデイズ製の上着を着ている。細いながらもメリハリのあるボディラインを強調しており、女性らしさが目立っていた。
「わらわはメァル・ズィオンバルクじゃ。ニューディズの貴族じゃが、故あってガーディアンをやっておる。よしなに頼むぞよ」
 高貴さを感じさせる強い口調と毅然とした態度に、一同はしんとなった。
「最後、アンドリュー」
「どうも、アンドリューです。普段は工作班や整備班にいる事が多いんだけど、狩り出されてきました。よろしく〜」
「以上三名を、本日より任務に参加させる。さて、編成についてじゃが……」
 と、そこまでラジャが言った途端。
 遠くから派手な爆発音が響き、わずかな振動が部屋全体を包んだ。
 ランディとオルハが反射的に走り出した。
 二人は瞬時に判断する。あの振動はおそらく、コロニー下部の制御区域の方だ。コロニーの機能維持装置や、荷物の搬出入を行うポート、それに倉庫ブロックなどが並んでいる区域だった。
「何か分かったら端末に送ってくれ!」
「ボクにもねー!」
 コロニー近辺で何度か調査艇が発見されているという報告と、嫌な予感が結びついて、二人はあっという間に飛び出して行ってしまった。
「うム……どうしたものか」
「私たちが追いかけます」
 言いながらイチコとヴァルキリーが席を立つ。
「私も行こう」
 テイルも席を立った。
「……分かった、頼むぞ。情報が入り次第連絡する。気をつけて調査を進めるんじゃぞ」
 ラジャの声に頷いて、三人が部屋を飛び出してゆく。
「大丈夫でしょうか? 念のため、わたくしも同行した方がよろしいのでは」
 渋い顔のラジャに、アナスタシアはおそるおそる声をかける。テイルが指揮官補佐である以外に、指揮を取れる者がいない。もし予想以上に困難な事態だった場合の対応を考えて、申し出たのだった。
「そうしたい所じゃが、これからアニーに頼みたい事があるんじゃよ。すまんが、そっちにまわってくれんかの」
「? 分かりました。ではそういたしますが……」
 ラジャが頷いて続けた。
「それに、何が起こってるか分からん事に人員を割くわけにもいかんしな。取り越し苦労で済めばいいのじゃが……」
「……そうですわね……」
 ラジャの心配そうな声に同調して、アナスタシアは呟くように答えた。

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注意事項

※この物語は株式会社セガが提供するオンラインゲーム「ファンタシースターユニバース」を題材としたフィクション(二次創作物)です。世界観、固有名詞、ゲーム画面を使用した画像など、ゲーム内容の著作権は株式会社セガにあります。
※小説作品としての著作権は勇魚にあります。
※登場する団体名・地名・人物などは、実在する名称などとは一切関係ありません。
※作中の表現や描写、ならびに使用している画像などは、ゲーム内で再現できるものとは限りません。
※この作品は、「戦い」「人間ドラマ」をテーマの一部としているため、暴力・性的な表現を含む場合があります。予めご了承下さい。

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