還らざる半世紀の終りに > universe18 このけだものめッ!
<< universe17

PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる時の半世紀の終りに〜 universe18 このけだものめッ!

 二人は、樹海に近い森の中を歩いていた。周りはほとんど木で埋め尽くされ、空は半分以上が隠されてしまっている。足元もたくさんの雑草が生え、落ちた枝や葉などが散乱しており足場が悪い。もともと湿気を多く含んだ土が、それに拍車をかけていた。
「ね、ねぇランディ……休憩しない?」
「何言ってんだ、さっき休んだばかりだろーが?」
 音をあげるヴァルキリーに、ランディは振り向きもせず答えた。確かに足場が悪く歩いているだけで体力を持っていかれるが、ランディはそれを意に介さない。
 何より、すでに午後3:00を過ぎていい時間になってきていたからだ。例の死体が発見された場所まではあと少し。陽が完全に傾くまでに目的地に到着しておきたかった。
「きーっ。ランディと違って私はか弱いんですからねっ」
「……」
 それには答えず、ランディは前を見ていた。違う事を考えていたのだ。言うまでもなく、今回の事件についてである。
 不可解な事が多いのもあるが、嫌な予感がする。理屈じゃない、野生の勘がそれを告げている。
 よくよく考えれば最近は悪い事続きだ。SEED襲来、"カマイタチ"なる事件の発生。そして不可解な死体。おまけに今日は、おかしなキャストに蜂の巣にされる始末。不快な話題は枚挙にいとまがない。
「……考えても仕方ねぇか」
 ランディは独りごちた。小さく息を吐いてかぶりを振る。
 それから、ふっと我に返ったように首をもたげる。鼻を鳴らしながら前方を見つめる瞳は、いやに真剣だった。
「ヴァル」
「……ん?」
 少し後ろで汗だくになっているヴァルキリーに、いきなり振り向いて言った。
「なんか獣臭くねぇか?」
「……? あぁ、それ自分の臭いじゃないの? ぷぷっ」
「……これは……?」
 ヴァルキリーのからかいを気にせず、五感を研ぎ澄ませて感じ取ろうとする。
 ……なんだ? この匂いは。獣のような、それでいて人間のような。だが、それだけではない何かが混じっている。獣……いや、だが原生動物などではない……。
 空を見上げて空気を見る。こちらが風下なのが幸いしていた。
「……ただの野良ならいいんだが」
「?」
 頭上にハテナマークを浮かべたヴァルキリーをよそに、呟いた。
 どちらにせよ、得体の知れない"何か"がいるのは確かだ。
「ヴァル、警戒した方がいい。変な"臭い"だ」
「……? うん、分かった」
 ヴァルキリーも勘付いたようだ。すぐににガーディアンの顔になってゆく。
「ついでに、フォトンの流れを見てくれると助かる」
「OK」
 ヴァルキリーがすっと視線を上げた。フォースの知覚でフォトンの流れを感知し始める。
「……わずかに、不自然な流れがあるよ」
「やっぱりな……何か分かるか?」
「……自然界にないフォトンが混じってる。SEEDに侵食された生物や、人造生物に近いけど……なんか違う。こんなの見た事ない……」
 不思議そうな顔で彼女は言う。
 ……なんだろう、このフォトンは? 今までに感じた事のないものだ。
「強いて言うなら……不自然すぎる」
「?」
 ランディは返答に迷っている。それもそうで、フォース独自の視点は、彼には分かるわけがない。
「何にも当てはまらない。でも同時に、何者でもある」
「? 矛盾してるな」
「そう、矛盾してる。……例えるなら……デザインは同じだけど、左右色違いの靴を履いてるようなもの……気持ち悪い」
 その言葉にランディは首を傾げる。意味はよく分からなかったが、ひとつだけはっきりした事がある。
 それは、"違和感"。
「……とにかく、だ。謎の生き物がいるのは確かだな」
「うん」
 頷くヴァルキリーに頷き返してから、ランディはナノトランサーから鋼拳を取り出して両手に着けた。
「すでにここは戦闘区域か……パーティの始まりだぜ」
「今日のメインディッシュは何かしらね?」
「さあな」
 つっけんどんに言いながらも、その口元は笑みを浮かべていた。
 ――どうにも最近はイラつく事が多い。スッキリさせてもらおうじゃないか。
「俺が先に進んで見てくるから、様子を見ててくれ。何かあったら、端末で教えて欲しい」
 ヴァルキリーは頷いて、自らも両手杖を取り出した。そのまま、その場に待機して辺りを警戒する。
 ランディは拳を構えて、ゆっくりと前に進み始めた。
「ヴァル、なんかあった時の手筈は分かるな?」
 端末のマイクを通して、ランディが言う。
「ランディが突っ込むのを、補助と回復で援護……そればっかりだね」
「理にかなってるだろ?」
「まあね」
 吹き出すヴァルキリーの声に不敵な笑みを浮かべながら、ランディは前へと歩いてゆく。
「……臭いが近づいてきた。近いな」
 鼻をすんと鳴らして、辺りを見渡した。前だけでなく、木の上や陰も警戒する。
 相手の正体が分からないというのは、大きなマイナスだった。相手が分からなければ作戦の立てようがない。つまり何の準備もできないという事だ。それがランディをあせらせていた。
「……ん? ちょっと待て。これは……」
「どうしたの?」
 思わず洩らした言葉に、ヴァルキリーが答えた。
「……まずいぞ。血の臭いがする」
「!」
 その時だった。
 二人は弾かれたように顔を上げる。
 わずかに声が聞こえたような気がしたのだ。
「……ヴァル、今の声、なんと言っていると聞こえた?」
「……"助けてくれ"、と……」
 次の瞬間、ランディは走り出していた。
「! ちょっと、ランディ!」
 慌ててヴァルキリーも駆け出す。
 先行するランディが200メートルほど走って、その視界に何か動く影が目に入った。人影だ。
 人影は五人。明らかに一回り大きいのが一人いて、そいつが残りの四人と戦っている。
 すぐに、ぎゃあという叫び声と同時に、小さな影が一つ、崩れ落ちた。
「なんだかよく分からんが……!」
 その場まであと100メートル。状況が見えた。
 大きな影は金髪のヒューマン男性だが、両手がやや長く、大きい。あれは……ビーストフォームをとった者の手ではないか。大きく見えるのは、手足が大きいのとその長さが常人より長いからだった。
 小さな影は、どれもビーストだ。しかも、よく見ると地面にはさらに数人、ビーストが倒れていた。
 ランディの判断に、迷いはない。
「俺はこっちの味方だぁ!!」
 叫びながら、金髪の男に突進してゆく。
「!?」
 突然の増援に、男はひるんだ。その隙にランディは一気に懐に潜り込み、その右の拳を脇をしめて握り込む。体を右に大きくひねり、振りかぶる。左足を踏ん張り、勢いを乗せた拳をまっすぐ伸ばして叩きつける。どずんと鈍い音が響いた。
 伸ばした拳はちょうど巨体の腹部をえぐるように突き刺さ……ったのだが。
「……?」
 感触がおかしい。柔らかい腹部を殴った感触はちゃんとある。だが、明らかにいつもと違う。
「……なんだ? 素手でシールドラインを殴ったような……」
 自分の拳に視線を移して、ランディは目を疑った。巨体に触れている箇所のフォトンが、消えている。これでは、籠手でぶん殴っているのと同じだ。シールドラインに阻まれて、効くはずがない。
「……たまの模擬戦なんだから、邪魔しないでよ」
 男が冷たい目で見下ろしながら言った。そしてそのまま、まるでランディに興味を無くしたように、ぷいと振り向いてビーストたちの方へ向かう。
「……なんだこれ」
 ランディはぽかんと呆けた顔で、それを見送っていた。
 鋼拳を見てみると、何事もなかったかのようにフォトンに包まれている。
「うがあああぁぁ……」
 突然、まわりのビーストの一人がナノブラストを解き放った。
「きゃはは! そうこなくっちゃね☆」
 男はいやにうれしそうに、けらけら笑って、突進してくるビーストと向き合う。そしてそのまま、長いリーチを生かして先制の一撃。左から放たれたフックがビーストのこめかみを激しく殴打する。続けて右フックが、よろめいた所を反対側から叩く。
 ビーストは衝撃に耐えられず、横にふっ飛んで転倒した。
「ねぇランディ! どうなってるの?」
「……俺が知りてぇ」
 息を切らせて駆け付けたヴァルキリーの声に、呟くように答えた。
 ふと見れば、眼前に広がるのは、とにかくひどい状況だった。地面に倒れるビーストたちは、明らかに全員が絶命していた。ひどいものになると、胸部をずたずたに切り裂かれた者、両肩から腕がもげている者、腰から二つにちぎれている者……。
「うっ! ……ううっ」
 その惨劇に気づいたヴァルキリーは、目をそらして口を覆い、茂みに駆け込んでしゃがみこんだ。
「……おいおい、なんだこりゃ。どうなってんだよ」
 その目の前で、ビーストフォームを取った者が、男の鋭い爪で首をはねられた。大量の血が噴き出し、ランディの体にばしゃっと浴びせられる。
「よくわかんねぇ。何やってんだよ、やめろ」
 思いつくままに呟いて、崩れそうな膝をなんとか繋ぎとめる。
 やめてくれ……嫌な記憶を思い出させないでくれ……。
 同盟軍の兵士たちの無差別虐殺……飛び交う銃弾……フォトンの刃に築かれる死体。
 仲間たちの、死体……。
「うお……おおおおおっ」
 ざわ、と空気の流れが変わった。
 周りの空気が全て、ランディを中心として回り、動き、集まってゆく。
 体がまばゆい光を放つ。集まったフォトンが光を放っているのだ。発光が落ち着くと、その中に体長3メートル近くはある、赤い髪と肌の破壊の化身が、立っていた。
 ランディは今、まさしく本物の獣の姿を取った。
「こんな姿には、なりたくねえんだがな……!」
 独りごちながら、巨体が飛んだ。
 目的はもちろん、金髪の男だ。体重を乗せた拳をふりかぶって、男に殴りかかる。
「やめろつってんだろうが!」
「?」
 男は目の前に惨劇に興じていて、反応がわずかに遅れた。振り向くと、視界いっぱいに巨体があった。
 ごずん、と鈍い音が響いた。
 ランディの右の拳が、男の鼻柱にめりこむ。男の首が強大な力に跳ね飛ばされて後ろへぐわんと傾き、そのまま体も後ろへとふっ飛ぶ。
「うらああぁぁぁ!」
 着地してすぐ、ランディもその勢いを乗せて再度飛ぶ。男が地面に落ちるか落ちないかの瞬間、体重を乗せた右足で顔面を踏みつける。ずぅんと地面が揺れ、男の頭はかかとと地面のサンドイッチになる。
「! こっ……このぉっ!」
 男がとっさに、ランディの右足を取る。素早く両手で抱きこみ、体を左にひねりながら力を加えてゆく。ランディの足に、関節が曲がらない方向に力が入る。膝を折って逃げる事はできない、そのまま力にまかせて体が倒される。受け身も取れず、孤を描いて横倒しに地面に叩きつけられた。
「ぐ……!」
 だが、うめいたのはランディではなかった。
 男の二の腕の肉が、削がれて激しく流血していた。
 ランディの左手には、血だらけの肉片が握られている。そう、投げられながらもとっさに男の左腕を掴んでむしり取ったのだ。
「……!」
 言葉も出ないまま、ヴァルキリーは口をぽかんと開けてそれを見ていた。
 ビーストフォームは理性を失い、動作も緩慢になり、本能のままに全てを破壊すると聞いている。
 ……それは嘘だ。
 恐ろしい、それ以外の言葉が出ない。
 こんなハイレベルの戦いを、あの筋力で実行されるのだ。これを脅威と呼ばずしてなんと呼べばいいか、彼女にはわからなかった。
 ただ、恐ろしかった。
「ふふ……僕にダメージを与えるとは……やるじゃないですかぁ」
 男もまた、意気揚々とした目で上体を起こす。
「今はイニシアチブを取らせたけど、そうはいかないよ!」
「うらああぁぁ!」
 立ち上がりかけた男の顔面を狙った、サッカーボールキック。男は右へと体を一回転させてかわす。そしてそのまま中腰で左足にタックル。転倒させようと試みる。
 膝に絡んだと思った瞬間、膝が顔面を打つ。
「! 読まれた!?」
 男も負けてはいない。それにひるまず中腰のまま、右へと抜けながら右からのフック。無防備な膝の裏に、長い爪が突き刺さった。
「!」
「これからですよぉ!」
 ランディの巨体がぐらりと揺れた。今のダメージで、左足の力が弱っている。
 男はためらわず、今度は左手をがら空きの脇腹に突き刺す。
「ぐああぁっ!」
 たまらずランディは叫んだ。爪が、15センチほども差し込まれていた。運が悪ければ内蔵にまで達しているかもしれない。
「ランディ!」
 ヴァルキリーは思わず叫んでいた。ビーストフォームの鋼の筋肉を、こうやすやすと貫かれるとは。
「まだまだっ」
 男はそのまま、左手を伸ばしたまま右手を後ろに引いた。
「反省しなさぁいっ!」
 爪が、ランディの背中を裂いた。赤い血が飛び散る。そしてそのまま二発、三発と素早く切りつける。その姿は、まるで料理人が手に持った食材を包丁で加工するような、そんな鮮やかな手つきだった。
「ぐあ……!」
「まだまだいきますよぉっ」
 爪の速度がどんどん早くなる。すでに、ヴァルキリーの眼では見えない速度になっていた。
「あ……ああっ、ランディ!」
 あっけに取られていたヴァルキリーが我に返ったかのように、叫びながら長杖を掲げて詠唱を始める。
「生命を支えるフォトンよ。傷を癒して……レスタ!」
 まばゆい光がランディを包むも、傷はあまりふさがらない。傷が深すぎて、怪我というよりも部分損傷と言った方が正しい。傷が塞がろうとする速度より、傷つけられる速度の方が早いのだ。
「これならっ……生命よ、活性化しその形を取り戻せ……」
 高く掲げた杖にフォトンが集まる。
「ギ・レスタ!」
 テクニックが完成した。杖がフォトンのまばゆい光を放っている。
 次の瞬間、ヴァルキリーの手から長杖がぽろり、とこぼれ落ちた。集まったフォトンがすぐに拡散してゆく。
 こぼれ落ちた杖が地面に落ち跳ねて踊ったが、彼女は振り上げた腕をそのままに、動けなかった。
「……あれ?」
 ヴァルキリーは、現状を把握するのに少し戸惑った。
 2メートルほど先にいる金髪の男。
 伸ばされた右手。
 その右手の爪が、自分の胸に深く突き刺さっている事に。
「ねぇ君、うるさいよ?」
 不機嫌そうに、男は眉をひそめて言葉を吐き出す。
「……な……っ……?」PSU小説・ファンタシースターユニバース 〜還らざる半世紀の終りに〜 universe18 このけだものめッ!
 ヴァルキリーの足が、ゆっくりと力をなくしその場に膝をつく。無意味に辺りを見回してから、震える手で胸に触れる。赤い血液に染まった両手を眼前に持ってきて、やっと事態を理解する。さあっと顔の血の気が引いていった。
「ヴァル!」
 ランディの叫びは届かない。
「これ……わた……し……?」
 ヴァルキリーはへなへなと尻もちをついた。ぐらんと首が後ろに傾いて、眼球がぐるんと上を見た。そのまま後ろにゆっくりと、まるでスローモーションのように傾いてゆき地面に倒れる。胸から赤い血液が吹き出し、地面へとこぼれて、赤い海が広がっていった。
「あぁ〜嫌なものを刺しちゃった。僕、女って嫌いなんだよね」
 言いながら男は右手を振って血を払う。
「て……てめえ……!」
「そもそも、君ら誰? 邪魔をするから僕がこんな事しなきゃいけないんじゃないですかぁ」
 言って、男は右足でランディの体を蹴りつける。その勢いで左手を引いて、体から爪を引き抜いた。支える力がなくなったランディは、その場に倒れこむ。地面にうつぶせに突っ込んで、顔を地面にしこたまぶつけた。
 すぐに体が光に包まれ、ビーストフォームが解けてゆく。噴き出した血液で服はすぐに赤く染まってゆく。
「せっかく、模擬戦ができるほどのいい素体ができたのにぃ」
「模擬戦……? 素体……??」
 地面につっぷしたまま、呟くように疑問符を投げかける。
「そっ☆ 高い能力のビーストを作るのは、なかなか難しいんだよっ」
 言って、男は爪をひゅんと振りかざし、眼前で交差させた。
「さて、もうお喋りはおしまい。これで終わりにしますよぉ!」
「……てめえ、……っ……名前を……教えやがれ」
 ランディが咳込む喉を抑えつつ、聞いた。
「僕はジャッキー。君は確か……ランディって呼ばれてたよね。残念、とても好みなんだけど……せめて、苦まないようにイカせてあげる☆」
「……ほざいてろ」
 ジャッキーが一歩、前に踏み出した。
 その瞬間。
 どぅん、と爆音が響いた。右足に激痛が走る。
  ジャッキーの目の前が土埃に包まれ、何も見えなくなる。
「トラップ!? 何時の間に……! もがっ」
「……ビーストフォームが解けた瞬間だ、フォトン光を使った、ちょっとした手品さ」
 埃の向こうから聞こえるランディの声。
 そして、伸びてきた右手に突っ込まれた、この円形の物体は……?
「焼き具合はどのぐらいが好みだい?」
 言った瞬間、トラップは爆発した。ジャッキーの頭部が炎に包まれる。
「ひぃぃぃぃ! 顔が! 僕の顔がぁ!!」
「生憎だがお客様、貴様にはウェルダンがお似合いだ。燃えちまいなッ!」
 ランディは言い放ってその体を蹴りつける。よろめいたのを確認してから血だらけの唾を吐き捨て、腕が燃えているのにも構わずヴァルキリーに駆け寄った。
 ……大丈夫だ、息はある。だが、傷はかなり深いかもしれない……。
 素早く地面に転がって腕の炎を消してから、そのまま左手にヴァルキリーを抱えると、一目散に走り出した。
「ち……全身ズタボロだわ火傷は負うわ……」
 何度か後ろを振り向きながら、ランディは独りごちる。
 ジャッキーは目隠しされた子供のように、ふらふらとよたつきながらもがいていた。あんな状態なら逃げ切るのは容易だろう。向うが実戦慣れしていなかったのが不幸中の幸いだった。
「くっ……支部までもってくれよ……」
 ランディは大量の失血でかすむ視界の中、指先ほどの小さな瓶を取り出し、ヴァルキリーに飲ませる。
 これは"トリメイト"という身体組織の再生能力を極限まで高める薬で、傷の治癒速度を極端に高める事ができる。だがもし、ヴァルキリーの傷が心臓まで届いていたら……再生速度を高めても追いつかない。血圧の勢いは少し再生した皮膚などすぐに破ってしまい、治る速度と相殺してしまうだろう。
 しかし、シティに着くまでに生きてさえいれば、ガーディアンズの救護班で適切な処置を受ける事ができる……そう考えながらピルケースをひっくり返して、自分の分を取り出そうとした。彼の傷もまた、体に伝わる痛みから内臓に達しているのは明白だったから。
 だが、ピルケースを逆さにしても、中から何も出てこない。疑問に思って中を覗き込んで、ランディは大きなため息をついた。
「ラスト一個かよ……ほんとにガーディアンズは人使いが荒いぜ」
 ランディは額を伝う血を拭いながら毒づく。赤い足跡を残しながら、とにかく走り続けた……。

<< universe17

注意事項

※この物語は株式会社セガが提供するオンラインゲーム「ファンタシースターユニバース」を題材としたフィクション(二次創作物)です。世界観、固有名詞、ゲーム画面を使用した画像など、ゲーム内容の著作権は株式会社セガにあります。
※小説作品としての著作権は勇魚にあります。
※登場する団体名・地名・人物などは、実在する名称などとは一切関係ありません。
※作中の表現や描写、ならびに使用している画像などは、ゲーム内で再現できるものとは限りません。
※この作品は、「戦い」「人間ドラマ」をテーマの一部としているため、暴力・性的な表現を含む場合があります。予めご了承下さい。

本サイトは全ての利用者に対して「エンターテインメイト小説」として娯楽を提供するものであり、閲覧・投稿についての保障・責任は一切行いません。
また、上記注意事項を越えたご利用によって生じた損害に関して、当サイトは一切責任を負いません。予めご了承下さい。

拍手

作品へのコメント、感想や質問などはこちらからお願いします。
(無記入でも押せますが、何か書いてくれるとすごく嬉しいです)